国内企業のデジタルトランスフォーメーション成熟度が1年で1段階上昇:製造マネジメントニュース
IDC Japanは、国内デジタルトランスフォーメーション(DX)成熟度に関するユーザー調査結果を発表。前回の調査結果に比べて成熟度が大幅に向上したものの「多くの企業では、短期的かつ従来のビジネスの効率化が中心で、革新的な製品やサービスの創出に向けた顧客エクスペリエンスの強化とエコシステムへの拡大が不可欠だ」(同社)という。
IDC Japanは2017年4月6日、東京都内で会見を開き、国内デジタルトランスフォーメーション(DX)成熟度に関するユーザー調査結果を発表した。国内ユーザー企業のDXに向けた取り組みは、前回の調査結果に比べて成熟度が大幅に向上したものの「多くの企業では、短期的かつ従来のビジネスの効率化が中心で、革新的な製品やサービスの創出に向けた顧客エクスペリエンスの強化とエコシステムへの拡大が不可欠」(IDC Japan ITサービス リサーチマネージャーの木村聡宏氏)という。
同社は2016年3月に1回目のDX成熟度の国内ユーザー調査結果を発表している。このときは、国内企業の約半数が5段階中下から2番目のステージ2(限定的導入)の成熟度にとどまっていた。約1年が経過してから実施した今回の調査結果では、国内企業の約半数が5段階中3番目のステージ(標準基盤化)の成熟度にあることが分かった。
木村氏は「DXへの注目が高まる中で、各企業の取り組みが進展したといえる。ただし、DXで最も重視される新しい製品やサービス、ビジネスモデル、価値を創出する4番目(定量的管理)や5番目(継続的革新)のステージに達するには、もう少し時間がかかるのではないか。3番目のステージに位置する企業は、これまで以上に全社的で連続的で、イノベーションに直結した取り組みを行う必要がある」と語る。
なお、DX成熟度のユーザー調査は、従業員1000人以上の大規模企業に所属する、部長クラス以上、あるいは予算、企画などの意思決定者である係長クラス以上を対象に実施したWebアンケートを用い、IT環境の導入状況を客観的に評価するために開発した「IDC MaturityScape」に基づき分析した結果となっている。回答者数は、第1回の243人から第2回は533人と2倍以上に増えた。
第2回の回答者の所属部門は、営業/マーケティング部門が180人、総務/経営企画部門が130人、製造/研究開発部門が111人、情報システム部門が17人、その他94人という構成。DXの成果を強く求める事業部門や経営部門が多くを占め、IT導入を担当する情報システム部門の割合は低い。また、回答者の産業別の割合については「今回は調査結果に入れていない」(木村氏)とのことだった。
デジタルトランスフォーメーションの略称はなぜ「DX」なのか
DXという言葉が注目を集めるようになったのは2016年からのことになる。木村氏は「DXを定義する上で、ITプラットフォームのシフトを考える必要がある」と説明する。
ITプラットフォームは、第1のプラットフォームをメインフレームとすると、第2のプラットフォームはクライアントサーバ(クラサバ)、そして第3のプラットフォームがクラウドコンピューティングになる。現在は、第2のプラットフォームから第3のプラットフォームへのシフトが進行している。
この第3のプラットフォームの上層、第4階層にくるものとして位置付けられているのが「イノベーションアクセラレーター」だ。IoT(モノのインターネット)、コグニティブシステム、ロボティクス、3Dプリンティング、AR(拡張現実)/VR(仮想現実)が含まれる。
木村氏は、IDCが考えるDXについて、「企業が第3のプラットフォームやイノベーションアクセラレーターとなる新たなデジタル技術を活用し、新しい製品やサービス、ビジネスモデル、価値を創出することだ」と述べる。結果として、企業の売り上げ拡大や顧客の増加をもたらすのが基本だが、「製造業のIoT活用における劇的なコスト削減も含まれるだろう」(同氏)という。
また木村氏は、デジタルトランスフォーメーションの英語がDigital Transformationであるにもかかわらず、略称がDXになっている理由についても説明してくれた。「英語では『Trans』を『X』と略す慣習がある。このためにDXというようになったようだ」(同氏)。
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