ラズパイとコンテナを使ったOTAが容易に、GitHubがCI/CD機能を提供:組み込み開発ニュース
ギットハブ・ジャパンは、米国本社のGitHubが2019年8月8日にβ版を発表した新機能「GitHub Actions」について説明。最大の特徴は、CI/CD機能の搭載で、Linux、macOS、Windowsなど任意のプラットフォーム上での開発からテスト、デプロイまでのプロセスを容易に自動化できるとしている。
ギットハブ・ジャパンは2019年9月4日、東京都内で会見を開き、米国本社のGitHubが同年8月8日にβ版を発表した新機能「GitHub Actions」について説明した。最大の特徴は、CI/CD(Continuous Integration/Continuous Delivery:継続的インティグレーション/継続的デリバリー)機能の搭載で、Linux、macOS、Windowsなど任意のプラットフォーム上での開発からテスト、デプロイまでのプロセスを容易に自動化できるとしている。既にβ版トライアルのユーザー登録募集をWebサイトで行っており、2019年11月13日には正式バージョンをリリースする予定だ。
GitHub Actionsは2018年に1度β版をリリースした新機能であり、その際にはCI/CD機能は搭載していなかった。ギットハブ・ジャパン ソリューションエンジニアの池田尚史氏は「もともとは、ソフトウェア開発を行う際に付帯的に発生していた設定やコンフィギュレーションなどの作業を含めたワークフローの自動化に焦点を当てて開発していた。しかし、数万人単位のβユーザーからのフィードバックで最も求められていたのはCI/CD機能だった。そこで、今回発表したGitHub Actionsでは、あらためてのβ版にはなるものの、CI/CD機能を搭載することとした」と語る。
新たなGitHub Actionsは、GitHubに完全統合(ユーザーインタフェースだけでなくAPIレベルでも)するとともに、あらゆるイベントにフックさせることで全てのワークフローを自動化することができる。YAML形式で記述することになるワークフローは、ソースコードと同様にGitHub上のコミュニティーでオープンソースコンテンツとして共有できる。「GitHubとしては、ソースコードだけでなく、開発のプロセスに当たるワークフローもオープンソース化することで、よりよいソフトウェア開発環境の構築に貢献することを目指している」(池田氏)という。
また、2019年末までには、クラウド上のGitHub Actionsと連携して、CI/CD機能をクライアントハードウェア上でも動作させられるエージェントソフトウェアの提供も予定している。対応OSは、Linux、macOS、Windowsで、「PCやサーバだけでなく、Raspberry PiのようなIoT機器の開発に用いられているハードウェアでも動作できるようにする」(池田氏)。GitHub ActionsとCI/CD機能、対応エージェントソフトを活用すれば、Raspberry PiにDockerをはじめとするコンテナベースのアプリケーションのデプロイを自動化できるので、OTA(Over the Air)のようなアプリケーション更新が可能になるわけだ。
GitHub Actionsの使用料は、オープンソースコミュニティー向けのパブリックリポジトリであれば無料。企業向けなどのプライベートリポジトリも無償の使用時間が提供されており、追加購入分をシンプルな従量課金としている。また、クライアントハードウェア上でのCI/CD機能の実行は無料に設定している。
GitHub Actionsの先行ユーザーには、SAPやUBS、ダウ・ジョーンズ(Dow Jones)、フィリップス(Philips)などがある。また、サードパーティーのCI/CDツールとGitHub Actionsの連携も進めていく考えだ。池田氏は「GitHub ActionsのCI/CD機能はエンタープライズクラスの性能を目指して開発を進めているが、より大きなビジョンはワークフローのオープンソース化にある。より多くの人にGitHub Actionsを使ってもらえるようにしてこの目標に近づけられれば」と述べている。
関連記事
- 国内の非IT企業がGitHub採用を拡大「全ての企業はソフトウェアカンパニーに」
GitHub JapanがGitHubの事業展開について説明。IT企業にとどまらず「全ての企業がソフトウェアカンパニーになる」(GitHub セールス担当バイス・プレジデントのポール・セイント・ジョン氏)として、日本国内でもGitHubの企業利用が拡大していることを強調した。 - 自動運転ソフトウェア開発を促進する、ROSノードサンプルをGitHubで公開
ネクスティ エレクトロニクスは、自動運転基本ソフトウェア「Autoware」と接続可能な「MATLAB/Simulink」のROSノードサンプルを埼玉大学と共同開発した。オープンソースとして、ソフトウェア開発プラットフォーム「GitHub」で公開した。 - オープンソースのプロセッサIP「SweRV Core」、性能や開発環境が拡充
Western Digital(ウエスタンデジタル/WD)は2019年6月18日(現地時間)、同社が開発を主導するオープンソースプロセッサIP(Intellectual Property)「SweRV Core」について性能強化や開発環境の拡充などを発表した。 - オープンソースソフトウェアスタックを高速化するハード設計をリリース
LeapMindは、オープンソースソフトウェアスタック「Blueoil」向けに高速化した新たなハードウェアアクセラレータ設計をリリースする。 - Bluetooth 5認証のオープンソースソフトウェアスタックを提供開始
Armは、Bluetooth 5認証を取得した、オープンソースのソフトウェアスタック「Arm Mbed Cordio Stack」の提供を開始した。同社の組み込みOS「Mbed OS」と連携でき、かつ他のプラットフォームへも移植できる。 - IoT専用のオープンソース組み込みハイパーバイザー
The Linux Foundationは、「ACRN(エイコーン)」と呼ばれる新たな組み込みレファレンスハイパーバイザープロジェクトを発表した。IoT専用のオープンソースの組み込みハイパーバイザーを構築するためのフレームワークを提供する。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.