国内の非IT企業がGitHub採用を拡大「全ての企業はソフトウェアカンパニーに」:組み込み開発ニュース
GitHub JapanがGitHubの事業展開について説明。IT企業にとどまらず「全ての企業がソフトウェアカンパニーになる」(GitHub セールス担当バイス・プレジデントのポール・セイント・ジョン氏)として、日本国内でもGitHubの企業利用が拡大していることを強調した。
ソフトウェア開発プラットフォームを展開するGitHubの日本法人・GitHub Japanは2018年8月6日、東京都内で会見を開き、GitHubの事業展開について説明した。IT企業にとどまらず「全ての企業がソフトウェアカンパニーになる」(GitHub セールス担当バイス・プレジデントのポール・セイント・ジョン(Paul St.John)氏)として、日本国内でもGitHubの企業利用が拡大していることを強調した。
GitHubは、ソフトウェア開発をオンラインでやりとりしながら進めるソフトウェア開発プラットフォームとして2008年にリリースされた。ジョン氏は「それまで、ソフトウェア開発を進めるのにミーティングやメールでのやりとりに半分以上の時間をかけていた。GitHubはその時間を省くとともに、ソフトウェアの不具合を減らすといった効果も得られ、高い評価を得た」と語る。
GitHubは基本的に無償で利用できることもあり、そのユーザー数は2011年に100万人、2013年に300万人となり、2017年には2800万人にまで拡大した。オープンソースソフトウェアの開発ではデファクトスタンダードになりつつある。これとは別に、有償で提供する企業向けのサービスとして、2011年にオンプレミス版の「GitHub Enterprise」を、2017年にクラウド版の「GitHub Business Cloud」を発表しており、ユーザー数は着実に増えているという。
ジョン氏は、企業向けGitHubサービスが拡大している理由として、非IT企業による採用が増加していることを挙げた。例えば、ウォルマート(Walmart)は、eコマースで小売業界を席巻するアマゾン(Amazon.com)に対抗するイノベーションを起こすため、シリコンバレーに開発拠点を2015年に開設したが、GitHubの採用によりソフトウェア開発者数を当初の約200人から今では約6500人にまで増やすことに成功したという。「同じような形でイノベーションを必要としている企業は多い。日本であれば製造業、特に自動車メーカーなどがそうだろう」(ジョン氏)。
ジョン氏は、国内のAI(人工知能)市場とIoT(モノのインターネット)市場の急拡大も、企業がソフトウェアを重視するトレンドに拍車を掛けているとした。国内AI市場は2017年の274億円から2022年に2947億円に、IoT市場は2017年の6.2兆円から2022年に12.5兆円に拡大するという(IDC Japan調べ)。「既存の非IT企業がAIやIoTを活用するためにオープンソースソフトウェアを重視するようになっており、それに合わせて企業向けGitHubサービスの採用も増えている」(ジョン氏)。実際に、2017年の国内オープンソースソフトウェアユーザー数は2015年比で77%増加しており、国内GitHubユーザー数も同250%増加した。
なお、製造業による企業向けGitHubサービスの採用事例は、海外であればGEやアップル(Apple)、フォード(Ford Motor)、日本国内であればブラザー工業、富士フイルム、EIZOなどがある。ただし採用企業数については、グローバル、国内とも非公開だ。
GitHub Japan ソリューションズ・エンジニアの池田尚史氏は「ソフトウェア開発のウオーターフォールからアジャイルへの移行が進展しているが、GitHubはアジャイル開発で特に力を発揮する。ソフトウェア開発プロセスのうち、コード管理やレビュー管理しかできないと思われていることも多いが、アイデアからコード、レビュー、テスト、デプロイに至るまで全てをカバーしている」と説明する。
池田氏はGitHubの強みについて「ユーザーベースの大きさ、巨大なエコシステム、膨大なデータの活用、ソフトウェアの資産化」を挙げた。特に、膨大なデータの活用については、機械学習に基づいてソフトウェアの脆弱性を通知する機能を2017年に投入しており「これは最初の1歩。今後の展開に期待してほしい」(同氏)としている。
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