羽を回転させる力を首振りに変換する扇風機の「リンク機構」:身近なモノから学ぶ機構設計“超”入門(1)(3/3 ページ)
身近にあるモノを題材に、それがどんな仕組みで動いていて、どんな機構が使われているのかを分かりやすく解説する連載。今回はつまみの付いた昔ながらの扇風機をテーマに、首振り機構の仕組みを理解する。
回転を往復運動に変える機構を探る
次は、この回転の力を使って首を振るための往復運動に変えていきましょう。
扇風機の首振りは、簡単な「リンク機構」を使って回転を往復運動に変えています。リンク機構とは、複数の部材(リンク)を組み合わせて構成した機構で、各リンクの長さや、どのリンクを固定するかによってさまざまな動きを実現します。
4つのリンクを使った機構は最も基本的なリンク機構の形で、下の図2では緑のリンクを固定し、青のリンクを回転させることで、紫のリンクを往復運動させています。扇風機の首振り機構はこのようなリンク機構のリンクの長さ、回転するリンク、固定するリンクを変えることで往復運動を実現しています。
では、実際に扇風機をバラして動きを確認していきましょう(動画1、画像4)。
ウォームギアによって小さい歯車が回転し、大きな歯車に伝わり回転することで、扇風機本体が往復運動しています。しかし、実際の扇風機の首振り機構を見たときに、先ほど図で表してきたようなリンク(節)の形をしているものは金属部品一つだけに見えます。では、簡易的に記したリンク機構のモデルと比較しながら見てみましょう。
図3で示したように、しっかりと4つのリンクが連動することで往復運動をしています。緑のリンク部分は扇風機の首の部分で、完全に固定されており、扇風機の往復運動の回転軸になっています。大きい歯車が黄色のリンク部品の役目をし、回転することで青いリンク部品が往復運動します。扇風機の羽が付く頭部分の筐体自体がこの青いリンク部分の役割を果たし、扇風機の首振り機能を成立させています。
ここまでが扇風機の首振り機構の仕組みです。ここで使われたリンク機構は少しずつ形を変えて、さまざまなものに使われています。自動車のワイパーなどもその代表的な例です。
リンク機構は、簡単なモノであれば厚紙を切り抜いて関節部分を画びょうで刺すだけでも簡易的な試作(動きの確認)が可能ですし、おもちゃのブロックのようなものも市販されています。いろいろなパターンを作って試してみることで、設計アイデアの幅が広がります。ぜひ作ってみてください!
次回も身近なモノの中からさまざま機構を紹介していきたいと思います。お楽しみに! (次回に続く)
筆者プロフィール
久保田昌希
1981年長野県生まれ。大学卒業後、大手住宅メーカーの営業職に就くも退職。その後に就いた派遣コーディネーターの仕事で製造ラインの人員管理などを行い製造業に関わりを持つ。その中でもっと直接モノづくりに関わってみたい、自分で製品を生み出してみたいという思いが強くなり、リーマンショックを機に退職。職業訓練で3D CADや製図、旋盤やマシニングセンターの使い方を学んだ後、現在のプロノハーツに入社。比較的早い段階から3Dプリンタを自由に使える環境に身を置けたため、設計をしてはすぐに社内試作を繰り返し、お客さまからもたくさんのご指導を頂きながら、現在では医療機器からVRゴーグルまでさまざまな製品の開発、試作品の製作を受託。その経験を生かし子供たちに向けた3D CADや3Dプリンタの使い方講座なども行っている。
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