羽を回転させる力を首振りに変換する扇風機の「リンク機構」:身近なモノから学ぶ機構設計“超”入門(1)(2/3 ページ)
身近にあるモノを題材に、それがどんな仕組みで動いていて、どんな機構が使われているのかを分かりやすく解説する連載。今回はつまみの付いた昔ながらの扇風機をテーマに、首振り機構の仕組みを理解する。
いざ分解! 扇風機の首振り機構を解明する
それでは早速、扇風機のカバーを外して中身を見ながら確認してみましょう。
回転軸を変える機構を探る
まずは、回転軸を変える機構です。扇風機の羽の回転は、水平方向の軸を中心に回転していますが、首振りは垂直方向の軸を中心に回転しています。このような交差する軸に回転を伝えるには「すぐばかさ歯車」や「クラウンギア」など、いろいろな方法が考えられます。クラウンギアは、タミヤの「ミニ四駆」を組み立てたことがある方であれば、前輪と後輪をつなぐシャフトを回転させるギアとして見たことがあると思います。
しかし、扇風機の首振り機構に使われているのは、すぐばかさ歯車でもクラウンギアでもありません。実際にバラしてみると、画像3のような「ウォームギア」が使われていました。
ウォームギアは、ネジ歯車(ウォーム)とそれにかみ合う歯車(ウォームホイール)からできており、減速比が非常に大きいことが特徴です。扇風機の羽の回転は機種にもよりますが、「強」の設定で1分間に約1000〜1500回転します。1秒間で16〜25回転です。多少減速したくらいでは、扇風機は高速で首を振る落ち着きのない扇風機になってしまします。ウォームギアによって大幅に減速することで、ゆっくりと首を振ってくれるようになるのです。
では、なぜ首振りつまみを押し込むと首振りが始まり、つまみを上げると止まるのでしょうか。今回の扇風機には、つまみの軸上に「ボール」と「バネ」が仕込まれていました。
扇風機の羽が回っているとき、ウォームギアも常に回転しています。しかし、つまみが上がっている状態(図1左)ではウォームギアと首振りつまみは連結しておらず、ウォームギアだけが回転を続けます。では、つまみを押し込んだ状態ではどうでしょう(図1右)。つまみが押し込まれると軸上に仕込まれたボールがバネに押されて飛び出し、ウォームギアの内側に作られた溝形状にはまり、軸がウォームギアと一緒に回り始めます。これが扇風機の首振りつまみの仕組みです。
こうして扇風機の羽を回転させる力を、首振りの軸に対する回転に変えることができました。
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