3Dプリンタや光学ドライブから“回転を直線運動に変換する機構”を学ぶ:身近なモノから学ぶ機構設計“超”入門(2)(1/3 ページ)
身近にあるモノを題材に、それがどんな仕組みで動いていて、どんな機構が使われているのかを分かりやすく解説する連載。今回は3Dプリンタや光学ドライブを題材に、回転運動を直線運動に変える機構(送りネジ機構、ラック&ピニオン機構)の仕組みを理解する。
皆さん、こんにちは! プロノハーツの久保田です。前回は、首振り扇風機の動きに着目し、回転運動を往復運動に変換する「リンク機構」について解説しました。
扇風機もそうですが、何らかの機構を動かす動力となるのは、モーターなどの回転運動であることが多く、そこからどのようにして別の運動に変えていくかを考えることが、機械・機構設計の醍醐味(だいごみ)でもあります。
そこで今回は“回転運動を直線運動に変える機構”を、さまざまな身近なモノから学んでいきたいと思います。
今回のテーマ:回転する力を直線運動に変える機構
回転する力を直線運動に変える機構は、さまざまなものがあります。例えば、ネジの回転する力を使ったものや、歯車の回転を直線運動に変えるもの、あるいは前回紹介したリンク機構を使って直線の往復運動に変換するといったことも可能です。
今回は、その中でも代表的な「送りネジ機構」「ラック&ピニオン機構」について掘り下げていきたいと思います。
送りネジ機構
まず、送りネジ機構ですが、その名の通り“ネジが回転する力を使って対象物を送る機構”です。図1、図2のように雄ネジ部分が回転することで、雌ネジ(ナット)部分が直線移動していきます。1回転するごとにネジの溝幅(ピッチ)分、ナット部分が移動するため、細かい送りを行うことが可能です。
中でもネジ軸とナットの間にボールが挿入されている「ボールねじ」は、高い位置決め精度を出すことが可能で、軽い力で動かすことができます。
ラック&ピニオン機構
続いて、ラック&ピニオン機構です。これは回転する歯車である「ピニオンギア」と直線状に歯を付けた「ラック」と呼ばれる部品を組み合わせた機構で、ラック側を固定すればピニオンギア側が動き、ピニオンギアのユニットを固定すればラック側が動きます(図3、図4)。こちらの場合はピニオンギアが1回転すると、その基準円の円周の長さ分進むので、送りネジ機構に比べると高速でユニットを移動させることが可能です。
3Dプリンタで使われている「送りネジ機構」
それでは、早速身近なモノからこれらの機構を探してみましょう。
筆者の身の回りを探したときに最初に目に付いたのは、毎日のように使用している3DプリンタのZ軸でした。
筆者が愛用しているのは「FDM(Fused Deposition Modeling:熱溶解積層法)」と呼ばれる樹脂を溶かして押し出すタイプの3Dプリンタです。ここにはボールねじを用いた送りネジ機構が使われており、造形物が出来上がるテーブルを上下に動かします。テーブルは一番ピッチが細かい設定(Z軸)で0.09mmずつ移動するため、精度良く細かい送りを行えるボールねじが最適というわけです。
ちなみにヘッド(樹脂を押し出すユニット)部をXY方向に動かす機構に関しては、「ベルト・プーリ機構」が使われていました。これは、ゲームセンターなどにあるクレーンゲーム機のアーム部を前後左右に動かす機構にもよく用いられています。
たまたま隣にあったので、3Dプリンタを取り上げてみましたが、皆さんにとって身近で、普段から目にするものではありませんでしたね。では、もう少し身近なモノから“回転する力を直線運動に変える機構”を探してみましょう。
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