手術用の高精細3Dビデオ蛍光顕微鏡を共同開発:医療機器ニュース
京都大学が「手術用高精細3Dビデオ蛍光顕微鏡」を発表した。高性能レンズを搭載し、遠方からのズームにより高倍率で手術部位の高精細3D画像を映し出すもので、術者と助手が同一画面を見ながら楽な姿勢で手術できる。
京都大学は2019年7月25日、鋭敏な視覚と優れた深視力を持つ「手術用高精細(4K)3Dビデオ蛍光顕微鏡」を発表した。同大学大学院医学研究科 教授の上本伸二氏らが、慶應義塾大学、三鷹光器、パナソニック コネクティッドソリューションズと共同で開発した。
同顕微鏡は、高性能レンズを搭載し、遠方からズームをかけて、双眼による3Dの4K画像をモニター上に映し出す。従来の顕微鏡では、高倍率時の焦点深度が浅くなり、ピントが合いにくかったが、三鷹光器の独自の光学レンズとパナソニックの4Kカメラを組み合わせて被写界深度と解像度を両立させることで、その課題を克服した。
対物レンズの双眼の間隔は35mmとし、手術部位から1m近い高さまで上げて使用する。手術部位とレンズの間が約1m離れているため、従来のビデオ顕微鏡では不可能なワーキングスペースを設けられる。術者が頭を上げた楽な姿勢で手術できるほか、術者と助手が手術部位を同じモニターで見ながら相互に操作できるため、教育効果の向上に寄与し、技術伝承にも活用できる。
また、ズームイン−ズームアウトをすることで、肉眼から顕微鏡の強拡大視野までをシームレスに3Dモニターに表示できる。このように鋭敏な視覚を持つことから、これまで顕微鏡や外科用ルーペによる拡大を必要としていた、さまざまな領域の手術に対応する。
さらに、組織や血管内を流れる血液・腫瘍を、蛍光画像としてリアルタイムで3Dモニターに重ねて表示できるので、腫瘍などの正確な位置や手術の進捗度を確認しながら、安全に手術できる。
2019年に医療機器として届け出をした後、製品の量産化を進め、2020年以降に国内での販売を強化していく。さらに2021年にアメリカ、2022年には中国市場で販売する予定だ。
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