医療シミュレーション用に複雑な立体形状を再現した肝臓モデルを販売:3Dプリンタニュース
伊那食品工業、ストラタシス・ジャパン、スワニー、丸紅情報システムズは、3Dプリント樹脂型「デジタルモールド」と植物由来のゲル素材から製作する臓器モデルの事業化について契約を締結し、医療業界向けに肝臓モデルを発売した。
デジタルモールド×植物由来のゲル素材で生み出す臓器モデル
伊那食品工業、ストラタシス・ジャパン、スワニー、丸紅情報システムズ(MSYS)は2019年4月22日、3Dプリント樹脂型「デジタルモールド」と植物由来のゲル素材から製作する臓器モデルの事業化について契約を締結した。また同日、医療業界向けに肝臓モデルを発売した。標準価格は9万円だ(税別)。
臓器モデルは、ストラタシスの最上位機種「Stratasys J750 3Dプリンタ」を用いて、スワニーが臓器の3Dデータを基に樹脂型と臓器内の血管モデルを造形。この型に、伊那食品工業が開発した植物由来のゲル素材を流し込み、臓器の複雑な立体形状を再現する。
スワニーのデジタルモールドは、3Dプリント樹脂型を用いて量産材料で射出成形できる最新技術だ。また、Stratasys J750 3Dプリンタは、多色造形やさまざまな硬さの再現に加え、高耐熱など高機能材料でも造形できる。伊那食品工業は、植物由来の多糖類をベースとする材料に実績を持つ。
各社の技術、機器、素材を組み合わせて開発された新しい臓器モデルは、水分を含んでおり、実際の臓器の色調や質感を忠実に再現するため、医療シミュレーションに使用できる。繰り返し成形が可能な素材を使用するため、手術技術の習得機会の増加にも貢献する。
臓器モデルの総販売窓口は、MSYSが担当。大学病院などの医療機関へ向けて販売していく。今回は、第1弾として肝臓モデルを販売するが、今後、他の臓器についても開発を進める計画で、3年間で5億円の売上を目指す。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 臓器模型を新開発の専用材料で製作、3Dプリンタで金型製作するデジタルモールドが医療へ
ストラタシス・ジャパン(以下、ストラタシス)は「第29回 設計・製造ソリューション展(DMS2018)」(2018年6月20〜22日、東京ビッグサイト)において、実質臓器模型が製作出来る「デジタルモールド・メディカル」を披露した。工業部品の射出成形およびプレス成形用の「デジタルモールド」に長野県内の食品メーカーの素材技術を加えて製作する技術だ。 - すごいでっしゃろ感はなくなった3Dプリンタ、久々に来たから感じた空気の変化
3Dプリンタ関連の展示ブースは、これまでは「設計・製造ソリューション展(DMS)」の一部だったが、今回から「次世代3Dプリンタ展」と銘打って独立した展示会として開催。工業デザイナーによる展示会レポートをお届け。 - PLA、PEI、ABS、そしてABSライク? 3Dプリンタ材料いろいろ
ママさん設計者と一緒に、設計実務でよく用いられる機械材料の基本と、試作の際に押さえておきたい選定ポイントと注意点を学んでいきましょう。今回は、3Dプリンタの材料をいろいろ紹介します。 - いまさら聞けない 3Dプリンタ入門
「3Dプリンタ」とは何ですか? と人にたずねられたとき、あなたは正しく説明できますか。本稿では、今話題の3Dプリンタについて、誕生の歴史から、種類や方式、取り巻く環境、将来性などを分かりやすく解説します。 - 3Dプリンタはインダストリー4.0の重要なピース?
製造業の産業構造を大きく変えるといわれている「第4次産業革命」。本連載では、第4次産業革命で起きていることや、必要となることについてお伝えしています。第14回となる今回は、インダストリー4.0の動きと合わせて再注目されている3Dプリンタの動向とその理由について紹介します。 - 「単なる試作機器や製造設備で終わらせないためには?」――今、求められる3Dプリンタの真価と進化
作られるモノ(対象)のイメージを変えないまま、従来通り、試作機器や製造設備として使っているだけでは、3Dプリンタの可能性はこれ以上広がらない。特に“カタチ”のプリントだけでなく、ITとも連動する“機能”のプリントへ歩みを進めなければ先はない。3Dプリンタブームが落ち着きを見せ、一般消費者も過度な期待から冷静な目で今後の動向を見守っている。こうした現状の中、慶應義塾大学 環境情報学部 准教授の田中浩也氏は、3Dプリンタ/3Dデータの新たな利活用に向けた、次なる取り組みを着々と始めている。