躍進する東芝パワー半導体、生産能力向上のカギは増床とIoT活用:メイドインジャパンの現場力(28)(2/2 ページ)
東芝デバイス&ストレージのディスクリート半導体の販売が好調だ。生産能力の増強を進めており、2021年度には売上高2000億円、営業利益率10%の実現を目指している。増床や生産性改善などを進めるディスクリート半導体の拠点「加賀東芝エレクトロニクス」(石川県能美市)の取り組みを紹介する。
8型クリーンルームを拡張
加賀東芝エレクトロニクスの生産するディスクリート半導体の用途は、ウエハーベースで、車載機器向けが30%、産業機器向けが25〜30%、スマートフォン端末向けやPC、家電向けなどその他領域が40〜45%となっている。特に車載向けについては電気自動車(EV)やハイブリッド車など電動化が進んでいることから、車載向けが大きく拡大しているという。
需要の拡大に合わせて、同社がまず取り組んでいるのが、8型クリーンルームの増床と設備増強である。8型クリーンルーム棟(KCR-III)は2007年3月に完成。2階建て構造で、1階は生産準備やサポートを行うサブ製造工程、2階が製造工程となっている。大きさは、奥行きが126m×幅72mで、2階の高さは4.5m、1階は6.5mである。このクリーンルームをフェーズ1、2、3と3段階に分けて拡張。2018年12月にフェーズ3が完成し、KCR-IIIの全面クリーンルーム化を実現できたという。クリーンルームのクラスは1万で、クリーンベンチによる局所クリーン化により、作業領域についてはクラス10を実現しているという。
全面クリーンルーム化は実現したが、各種設備の増強を現在進めているところで、2019年度中に2017年度比で1.3倍、2020年度中に1.5倍まで引き上げる方針を示している。徳永氏は「8型についてはフル稼働の状態が続いており、能力の増強が必要な状況だった。KCR-IIIに設備を導入し生産を本格化することで、1.5倍まで生産能力を高める。工場の用地はまだ余裕があるので、その後さらに受注が増えてくれば、新生産棟の建設も検討する」と述べている。
IoTを活用した生産性改善なども推進
また、製造現場の人手不足などが深刻化する中、ITおよびIoT(モノのインターネット)の活用も強化している。加賀東芝エレクトロニクスでは、半導体の複雑な製造工程の情報を統合し、リアルタイムに工程を一元的に把握し判断を下せるようにするRTD(Real Time Dispatcher)システムを導入。これを情報基盤とし、エリア配分の調整など独自の機能などを盛り込みながらブラッシュアップしてきた。
ただ、機械の情報だけでは不十分で、人の動きなどを把握するために活用を進めているのがIoT(モノのインターネット)である。同社はクリーンルーム内では人手でキャリーケースによりウエハーを搬送しているが、取り違えなどミスが発生したり、確認に時間がかかったりするなど、作業負荷が高い状況になっていた。
これらを、ウエハー1つ1つにコードを割り振り、キャリーケースにRFIDデバイスを搭載することで、自動的に個々のウエハーのトレーサビリティーが確保できるようにした他、正しい機械への設置や作業手順でない場合は、アラートを発し、ミスが起きないようなシステムを構築したという。「どの機械にセットすればよいのかモニターに作業指示が表示され、間違っていれば作業が進まないようになっている。基本的には、作業者が迷う時間をなくすようにということを考えた」(工場担当者)。
徳永氏は「日本全体が同じ傾向にあると思うが、人材不足感は高まっている。マーケットの動向に合わせて人材配置を柔軟に換えるなど、作業状況の見える化と最適化などをリアルタイムに行えるようにしていきたい。また、さまざまな工夫により人作業の負担を軽減し生産性を高める取り組みが重要だ。システム化や自動化は必須で、これには全社を挙げて取り組んでいる」と述べている。
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