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オリジンベースドアートシンキングで創造的なモノづくりを進めるにはなぜモノづくり日本でアートシンキングなのか【後編】(2/2 ページ)

「オリジンベースドアートシンキング」とは何か? 今回はデザインシンキングやロジカルシンキングとの違いを交えながら理解を深めていきます。また京セラをアートシンキングの角度から考察。まとめとして、日本のオリジンとモノづくりの関係性について紹介します。

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京セラの稲盛和夫氏をオリジンベースドアートシンキングで分析

 オリジンベースドアートシンキングの根幹を担うオリジンは、一般常識や物事の前提を取っ払い、ゼロベースで再定義(=イノベーションの再定義)し、世の中を洞察していく角度を決めていく際に重要となります。その具体例として、日本を代表するモノづくり企業である京セラの創業者で、“京セラフィロソフィ”を生んだ稲盛和夫氏のオリジンをひも解いていきたいと思います。

京セラフィロソフィ手帳
京セラフィロソフィ手帳 出典:京セラ

 7人兄弟の次男として生まれた稲盛氏は、政治もビジネスも全ては「人が原点」だと考えています。そして、人を育てるのはまず「母親」であるといっています。稲盛氏の母親は「人としての正義」に厳しく、その考えは多くの企業に影響を与えている京セラフィロソフィの中にも現れています。

 京セラフィロソフィの「より良い仕事をする」の中に、「現場主義に徹する」という項目があります。その解説に、

ものづくりの原点は製造現場にあります。営業の原点はお客さまとの接点にあります。


とあり、人と人が対面で、顔が見える状態で物事を進めていくことで、はじめて正義感を持つことができると説いています。こうして、稲盛氏はセラミックスの分野のみならず、第二電電(現:KDDI)の設立やJALの再建など、多くのイノベーションを起こしてきました。

日本はやっぱり、モノづくりが得意な国である

 デンマークに留学した際、日本のアイデンティティーとして“モノづくりが得意である”ということを強く感じました。また、これは全ての国の人が持つ文化ではないということも分かりました。

 デンマーク人のメンタリティの根底には「ヤンテの掟(おきて)」の影響が強くあります。ヤンテの掟とは“自分は特別な存在ではない”という考え方です。そのため、男女問わず、料理もDIYも何でもできます。柔軟性が高いため、先を見越して、カチッとしたスケジュールを立てるというよりは、その場その場で浮かんだアイデアを実行していくという傾向にあります。

何でもやってしまう、留学先のクラスメイトのデンマーク人
何でもやってしまう、留学先のクラスメイトのデンマーク人

 こうしたオリジンは、北欧という厳しい環境の影響が大きいと考えられます。少し想像してみてほしいのですが、やはり地球は太陽の周りを回っていて、太陽からの距離が遠くなる北欧の冬は、日照時間が短く、資源に限りがあります。今あるリソースの中でうまく工夫しながらやりくりする必要がありますし、外に出られない冬の間は、家の中でのコミュニティーが大切になり、お互いを尊重する文化が生まれます。このようにして北欧の柔軟性は育まれてきました。

 一方、日本は先を見越して、どんな状況にも対応できるような高い品質や完成度を求めることが得意です。海の幸、山の幸に恵まれながらも、地震や台風などの想定外の天災が多く発生する環境の中で、不測の事態にもうまく耐えられるように先回りする思考回路が生まれました。この思考回路は工程別にロットで生産していくモノづくりに欠かせない思考回路です。

 そして、もう一つ日本がモノづくりに適している要素があります。日本は少子高齢化の中にあっても世界の人口ランキングで第11位と、多くの人口を抱えています。人口が多いということは、長いプロセスを要する産業にも耐え得るマンパワーがある(ただし、高齢化問題にどう向き合うかという課題はありますが……)ということになります。

 以上の背景から、日本はモノづくりに適した国といえるのです。会社の中で適材適所があるように、世界の中でも国の特性に応じて、適材適所、得意な産業があります。日本は世界の中でも稀有(けう)な“モノづくりに適した特性”を有する国なのです。

モノづくりが得意な日本こそ、オリジンベースドアートシンキングを!

 このようにモノづくりの条件に恵まれている日本が、再び世界のモノづくりをリードするために必要な要素は何でしょうか? それはオリジンに立ち返り、オリジンを起点とし、独創的で感動までもたらすような事業開発を行うことです。

 資本主義が成熟した国々は、どこも同じような停滞感が漂っています。データを起点としたマーケットインなプロセスではたどり着けない境地へとブレークスルーするために、答えや問いを、自分自身あるいは自社の中から発することで、その扉は開かれていきます。(完)

筆者プロフィール

尾和恵美加(おわ えみか)
株式会社Bulldozer代表/異色の経歴を持つ、パラダイムシフター

アートシンキングを用いた新規事業開発・チームビルディングワークショップ事業を展開。日本IBMにコンサルタントとして入社し、当時はまだ一般的ではなかったデザインシンキングも用いながら、製造業やエアラインなどの働き方改革案件へ参画。社内で“右脳爆発系”と呼ばれる中、欧州式ファッションデザインスクール「coconogacco」と、デンマークのビジネスデザインスクール「Kaospilot」を経て起業。プライベートでは拡張家族の実験を行う「Cift」へ所属し、モバイルハウスとの2拠点生活を準備中。

株式会社Bulldozer:https://bulldozer.site/



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