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コマツとランドログの事例に見る「デザイン思考」の実践いまさら聞けないデザイン思考入門(後編)(1/3 ページ)

前編では、デザイン思考が求められている理由、デザイン思考の歴史、デザイン思考と従来型の思考との違いについて解説した。後編では、デザイン思考を実践するにあたり、押さえておきたいプロセスやその手法を、コマツが直面した課題やランドログのアプローチを中心に紹介していく。

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 前編では、デザイン思考が求められている理由、デザイン思考の歴史、デザイン思考と従来型の思考との違いについて解説した。後編では、コマツと、筆者が所属するランドログの取り組みを例にとって、デザイン思考を実践するためのプロセスやその手法を紹介する。

デザイン思考のコアは「顧客への共感」

 従来型の思考は、「技術的な現実性」と「ビジネス価値」を満たすことに力点が置かれていた。それに対してデザイン思考は、「顧客ニーズ=課題の発見」を中心に据え、顧客が抱える問題を再定義することが起点となっている。


課題発見のためのデザイン思考,課題発見のためのデザイン思考(クリックで拡大) 出典:SAPジャパン

 デザイン思考のプロセスで特徴的なのは、課題発見となる最初のフェーズに「顧客への共感(Empathize)」があることだ。

デザイン思考のプロセス
デザイン思考のプロセス。最初のフェーズが「顧客への共感(Empathize)」だ(クリックで拡大) 出典:SAPジャパン

 ここでは、コマツの建機が稼働している「自動車専用道路の路床工事」を例に考えてみよう。実現したかったのは建設現場における「生産性の向上」だ。そして、その解決策としてコマツは「より高性能なICT建機を追加」した。しかし、当初期待していた通りの成果は上げられなかったのである。

コマツがICT建機を市場導入した後に直面した課題
コマツがICT建機を市場導入した後に直面した課題(クリックで拡大) 出典:ランドログ

 一方、デザイン思考でこの事例を解決する場合には、最初のアプローチからそのプロセスが異なる。デザイン思考の第一歩は、「顧客への共感」だ。顧客がどのような課題を抱えているのかを実際に現場に立ってヒアリングし、「顧客が何を解決したいのか、そもそも課題は何か」を再定義することから始める。その上で、「課題を解決するにはどのようなアプローチがあり、何をすべきなのか」を考えるのだ。

 実は、共感の視点から現場を見ると、従来の手法では課題の原因にたどり着けないことのほうが多い。この事例も、ボトルネックとなっているのは、天候不順や建機の故障、盛り土を運ぶダンプカーの稼働率の低さなどだ。

 こうした課題を見つけ出すには、「そもそも現場はどのような環境なのか」「コマツの建機という技術的制約に縛られていないか」といった点に着眼しなければならない。建設現場には複数企業の建機があり、作業員も元請けから下請けまでさまざまだ。さらに、トラックも多様な特殊車両がある。つまり、コマツの建機だけが効率よく土を採掘したとしても、課題の解決にはならない。本事例における本当の現場の課題は、建機を利用する前行程の「ダンプトラックによる土の運搬」だったのである。

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