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23万円は本当に高いのか? “いつか使いたい”松葉づえの開発ストーリー「GOOD DESIGN BEST 100とその未来 vol.4」より(1/2 ページ)

自分に合う松葉づえに出会えません――。1通のメールから始まったプロダクト開発。メディカルチャープラスが手掛けた「ドライカーボン松葉杖」に込められた思いとは? 開発ストーリーからこれからのモノづくりのヒントを学ぶ。

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KOIL

 優れたプロダクトにフォーカスし、その誕生の経緯などを通じ、デザインやイノベーションの本質を考えるイベント「GOOD DESIGN BEST 100とその未来 vol.4」(主催:ロフトワーク、共催:三井不動産、日本デザイン振興会)が、2014年9月30日に「KOIL(柏の葉オープンイノベーションラボ)」で開催された。

 イベントテーマにあるGOOD DESIGN BEST 100とは、グッドデザイン賞を受賞したプロダクトの中でも、特に優れた製品100点に贈られる賞である。今回のイベントでは「2013年度 GOOD DESIGN BEST 100」に選ばれ、グッドデザイン金賞を受賞したメディカルチャープラスの「ドライカーボン松葉杖」の企画開発の背景やデザインの役割などについて聞くことができた。

 本稿では、メディカルチャープラス 代表取締役社長の杉原行里氏と、同社 共同代表取締役 デザインディレクターの山崎晴太郎氏の講演内容を軸に、ドライカーボン松葉杖の開発ストーリーをお届けする。


「KOIL(柏の葉オープンイノベーションラボ)」
柏の葉キャンパス駅近くにある「KOIL(柏の葉オープンイノベーションラボ)」

医療・福祉プロダクトに変革を!

メディカルチャープラス 代表取締役社長の杉原行里氏
メディカルチャープラス 代表取締役社長の杉原行里氏

 メディカルチャープラスは2012年に杉原氏と山崎氏が立ち上げた、アイデアとデザインを軸にこれまでにない新しい医療・福祉プロダクトの実現を目的とするベンチャー企業だ。

 彼らが目指すのは、その専門性の高さ故に他業界との隔たりがあり、さまざまな制約が存在する医療・福祉プロダクトの変革。「現在の医療・福祉プロダクトは、デザインの選択肢が豊かではない。ファッションのように多様性を持たせ、新たな角度から製品を生み出す必要があると考えている」と杉原氏は語る。

 ここで「松葉づえ」について想像してもらいたい。おそらく、多くの方が木製のものかアルミ製のものを想像し、その形状や色・デザインも同じようなものを頭に思い描くのではないだろうか。それはなぜか。答えは単純で、「世の中にある多くの松葉づえが、レンタルユーザーを想定した量産品だからだ」と杉原氏。

 杉原氏は講演の中で、このプロダクトを手掛けるきっかけとなった1通のメールを紹介してくれた。そこにはこう書いてあったという。


 自分に合う松葉づえに出会えません――。


メディカルチャープラス 共同代表取締役 デザインディレクターの山崎晴太郎氏
メディカルチャープラス 共同代表取締役 デザインディレクターの山崎晴太郎氏

 このメールをくれた男性は、4歳のころから左下肢がマヒし、松葉づえ生活を長年送ってきたそうだ。「これから先の人生もずっと松葉づえを使い続けるのに、『レンタルユーザーを想定した量産品からしか選ぶ余地がない』と嘆いていた」と杉原氏。

 ちょうどこのころ医療・福祉プロダクトに挑戦してみたいと考えていたこともあり、杉原氏と山崎氏はこの出会いを機に、“個人所有”を目的とした新しい松葉づえ開発に挑戦することになった。


メディカルチャープラスの「ドライカーボン松葉杖」
メディカルチャープラスの「ドライカーボン松葉杖」
ドライカーボン松葉杖(1)ドライカーボン松葉杖(2) 「ドライカーボン松葉杖」の一部には、アルミのアセンブリパーツ(カラーバリエーションあり)も採用されており、デザインのアクセントになっている ※画像クリックで拡大表示

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