柏から世界へ！ 三井不動産がオープンイノベーション拠点を設立：製造マネジメントニュース（1/2 ページ）

三井不動産は、柏の葉スマートシティ（千葉県柏市）の中核街区において、オープンイノベーション拠点として「KOIL（柏の葉オープンイノベーションラボ）」を開業する。同施設内にはコワーキングスペースなどの他、3Dプリンタやレーザーカッターを備えた「KOILファクトリー」を用意する他、“エンジェル投資家”からベンチャー企業が投資を受けられる仕組み作りなども行うという。

[三島一孝，MONOist]

　三井不動産は、柏の葉スマートシティ（千葉県柏市）の中核街区に新たなオープンイノベーション拠点として「KOIL（柏の葉オープンイノベーションラボ、呼称コイル）」を2014年4月14日に開業する。2014年4月10日にはこれに先立ち記者発表会を行い、報道陣に新施設を公開した。

　三井不動産は、柏の葉スマートシティプロジェクトとして、柏の葉地域の新たな都市計画を推進。東京大学や千葉大学のキャンパスが近隣にあることから「公・民・学」の連携をベースにし、日本社会の抱える課題を解決するステージとして社会実験などを行える新たな都市環境の構築を目指している。同プロジェクトでは「環境共生都市」「健康長寿都市」「新産業創造都市」の3つのコンセプトを掲げており、今回のKOIL設立はこのうちの「新産業創造都市」の一環の取り組みとなる。

三井不動産 常務執行役員の小野澤康夫氏

　三井不動産 常務執行役員の小野澤康夫氏は「当社は日本に超高層時代を切り開いた霞が関ビルなど常にベンチャースピリットを持ちさまざまな地形領域を開拓してきた。経済の新陳代謝が求められる中、新産業の創出は大きな社会的課題だ。デベロッパーとしてビル開発において新産業創出に貢献する場作りを行っていくとともに、ビル開発以外の領域でも積極的にイノベーションを推進していきたい」と語っている。

　実際に同社では既に、インキュベーションオフィス「LIAISON-STAGE霞が関」や横浜市の「Defta Partners」、千葉県千葉市の「Venture Support Center」東京都中央区のコワーキングスペース「Clipニホンバシ」など数多くの新事業創出拠点を運営している。

　また、これらのハード面に加え、ソフト面でも数多くの取り組みを行う。研究拠点が数多く存在するつくばエクスプレス（TX）沿線の創業支援を行う「TXアントレプレナーパートナーズ」を設立しベンチャー企業への出資を行ってきた他、アジア地域とのグローバルなベンチャーネットワーク構築に向け「アジアアントレプレナーシップアワード」などを創設し国際的なネットワーク構築を行ってきた。

　さらに今回のKOIL設立に先立ち、三井不動産内に新産業創出を支援する「ベンチャー共創事業室」を2014年4月1日に新設。拠点活用だけに留まらず、持続的に幅広くベンチャー企業の活動をサポートする体制を構築している。

3Dプリンタやレーザーカッター備えたKOILファクトリー

　新拠点KOILは、起業家から生活者まで、多様な人々の知識、技術、アイデアを組み合わせることで革新的な新事業や製品・サービスを創造するための場として活用する。「国内最大級」（同社）のコワーキングスペース（会員制共有ワークスペース）となる「KOILパーク」や、ベンチャー企業だけでなく大手企業の事業部門が入居する「オフィスフロア」、3Dプリンタやレーザーカッターなどを備え簡単にデジタルファブリケーションが行える「KOILファクトリー（デジタルモノづくり工房）」、カフェやスタジオなどを備えるオープンイノベーション拠点だ。これらの施設に加え、オフィスとしての賃貸スペースを合わせた面積は約8000m²に及ぶという。

国内最大級のコワーキングスペースの「KOILパーク」（左）とデジタルファブリケーションを行える「KOILファクトリー」（右）（クリックで拡大）

ロフトワークの代表取締役社長 諏訪光洋氏

　KOILのプロデュースを行い、開業後はイベント開催やコミュニティー運営などで関わるロフトワークの代表取締役社長 諏訪光洋氏は、KOILは単なる“コワーキングスペース”ではなく“イノベーションセンター”としての役割を担うと強調する。「起業家や小規模な事業家が主な利用者であるコワーキングスペースではなく、大企業の事業部門などが入居し、大企業とベンチャーの出会いの場ともなれるところが大きな違いだ。新たな結合を生み出すことでイノベーション創出に貢献する」と述べている。