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4畳半で物がなくても豊かな暮らし、2030年のテクノロジーとサービスでデザインの力

パナソニック アプライアンス社のデザインスタジオ「FUTURE LIFE FACTORY」は、未来の暮らしを考えるイベント「EXPANDED SMALLー豊かさを拡げる2030年のくらし展ー」(2019年3月2〜5日、港区南青山)を開催した。

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走る4畳半が集まって暮らす、2030年のコンセプト(クリックして拡大)

 2030年、4畳半での豊かな暮らし方とは──。パナソニック アプライアンス社のデザインスタジオ「FUTURE LIFE FACTORY」は、未来の暮らしを考えるイベント「EXPANDED SMALLー豊かさを拡げる2030年のくらし展ー」(2019年3月2〜5日、港区南青山)を開催した。

 同イベントでは、多様化する人々の暮らし方や価値観に対応した住居や家電、コミュニティーのコンセプトを一般向けに公開。パナソニック社内のさまざまな分野のデザイナーが集まり、2030年のライフスタイルを企画した。

必要に応じて外から

 披露したのは、4畳半の小さな箱型のスペースにタイヤが付いた住まい「EXSMALL」だ。4畳半にはソファベッドと、シャワーを浴びることもできるスペース、最小限の洋服しかない。この住まいは移動可能で、電気や上下水道などのライフライン、共用の家電やキッチン、人が集まる場所などが用意された「VILLAGE」にEXSMALLの住人同士が集まって暮らす。住人は、自律走行するEXSMALLで移動しながら、複数のVILLAGEを渡り歩くこともできる。

 このコンセプトは、多様な選択肢の中で人々の価値観が常に揺れ動くという将来の予測に基づいている。1つの定まった軸を持たず、選択を悩んだり、気持ちと行動に矛盾が生まれたりすると想定している。そのため、住まいをコンパクトなものにし、その時に必要なものや気持ち、用途に合わせて、家の外のサービスを取捨選択しながら衣食住を柔軟に扱えることに重点を置いた。

 4畳半のスペースには、このコンセプトをベースにした未来の家電と暮らしのサービスが取り入れられた。自動運転技術や蓄電池、太陽光電池、通信、セキュリティ、照明、各種センサー、空調など、パナソニックの技術を結集しているという。

 例えば洋服は、先述したように最小限しか部屋に置いていない。コーディネートの提案やレンタル、クリーニングや保管といったサービスが今後さらに充実するため、住人は天気予報や外出の予定に合わせて数日分の洋服を予約し、着るときに届けてもらう。EXSMALLには、こうしたサービスと連動したクローゼットがあり、衣類の簡単なケアや服の種類の識別を行う。

洋服は最小限しか住まいに置かない(左)。今週着る服はその都度配達してもらう(右)(クリックして拡大)
ウオーターサーバが、体調に合わせて飲み物を勧めてくれる(左)。きちんと食事をとりたければ、VILLAGEに行く(右)(クリックして拡大)

 食事も洋服と同様に、必要なときに外のサービスを利用することを提案した。EXSMALLの中にはウオーターサーバがあり、お湯や水を使って栄養を効率的に摂取できるドライフードや粉末飲料を飲み食いすることができる。ウオーターサーバは粉末飲料の配達サービスと連動し、体調に合わせて飲料の種類を提案したり、原材料のルーツについて説明を提供したりする。台所が必要なときはVILLAGEを訪れる。自分で調理したり、VILLAGEにいる料理が得意な人に作ってもらったりする。


シャワーを浴びたり、瞑想(めいそう)したりできるスペース(クリックして拡大)

 4畳半のEXSMALLには浴室やシャワーブースもない。大きな浴場はVILLAGEで使うことが可能だが、EXSMALLには必要なときにシャワールームにもなるスペースが用意されている。

 そのスペースはシャワーを浴びるためだけのものではなく、瞑想(めいそう)したり集中したりしたい時には音や光で最適な環境を整えるプライベートルームという位置付けだ。それぞれの用途で部屋を持つのではなく、住人の状態を察して最適な環境をその都度つくりだすことにより、生活に必要なスペースを最小限に抑える。

都市計画も含めた暮らしの提案


選択した香りに合わせて、プロジェクター一体型の窓に行き先を投影する。そこに行きたければ実際にEXSMALLで移動することもできる(クリックして拡大)

 VILLAGEは、ライフラインをシェアし、共有スペースに人が集まる公共施設であるだけでなく、自治体や不動産会社、民間企業、鉄道会社などの社外パートナーと協力して取り組むまちづくりとしての側面もある。社外パートナーがEXSMALLとVILLAGEを提供し、利用者はパナソニックに利用料を支払う。利用料は、VILLAGEのグレードや、移動可能なVILLAGEの数に応じて決めることを提案した。VILLAGEは、EXSMALLの住人も利用できるようにする。

 FUTURE LIFE FACTORYのメンバーは、こうしたコンセプトが2030年に多数派の価値観になると考えているわけではないようだった。ただ、VILLAGEとEXSMALLにつながる価値観は既に広がっているという。「自動運転技術が実現したとして、EXSMALLのようなクルマが自由に走り回って好きな場所に行くのは簡単なことではない。ただ、独り立ちする子どもが『住むならシェアハウスがいい』と強くこだわっていて、個室があって服さえ置ければあとは共用でいいと話しているのを聞くと、身近なところでも価値観が変わっていくのが感じられる」(FUTURE LIFE FACTORYのメンバー)。


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