単なるモノづくりの枠に収まらないデジタル職人たちが生み出すプロダクトの数々:デザインの力(1/2 ページ)
デジタルアルティザンは2019年4月11日、新拠点である「DiGITAL ARTISAN STUDIO」のオープンハウスイベントを開催。大型3Dプリンタや全身3Dスキャナーによる体験展示、デジタル技術を活用したアート作品、クライアントワークの成果物などの一部を公開した。
デザイナーやエンジニア、アーティストからパティシエ、靴職人まで、さまざまな領域の“職人”たちが集うデジタルアルティザンは2019年4月11日、新拠点である「DiGITAL ARTISAN STUDIO」のオープンハウスイベントを開催。大型3Dプリンタや全身3Dスキャナーによる体験型の展示、デジタル技術を活用したアート作品、クライアントワークの成果物などの一部を来場者に公開した。
超巨大3Dプリンタがお出迎え
会場に入り、まず真っ先に目に飛び込んできたのは、超巨大なFDM方式3Dプリンタ「EXF-10」である。本体サイズが1700×2000×2100mmと大きく、最大800×1400×1100mmもの造形物を出力できる。まだ試作段階であるが、最終的には倍以上の大きさを実現し、20フィートコンテナに入れて運搬しながら造形できる3Dプリンタを目指す(関連記事:コンテナで運ぶ超大型3Dプリンタ、自動車のボディーも出力できる)。
ペレット押出機を搭載しており、粒状のペレットをそのまま利用できるのが特長。エラストマーをメインに、さまざまな材料を用いた出力テストも行っているという。EXTRABOLDのプロジェクトとして開発が進められており、デジタルアルティザンが企画および開発支援などを行っている(設計および開発は、岩間工業所とエス.ラボが担当)。
撮影も一瞬、お手軽な全身フル3Dスキャナー
そして、その隣には全身フル3Dスキャナー「SUPER LIGHT PHOTO 3D SCANNER」を実演。アルミ製フレームに104台ものRaspberry Pi+カメラモジュールが取り付けられており、瞬時に撮影が行える。
撮影データから3Dデータをモデリングする「フォトグラメトリー技術」を用いた独自開発のソフトウェアにより、全身3Dスキャンデータを簡単に生成できる。被写体となる人物(中心に立つ)を囲むようにカメラが取り付けられているため、ターンテーブルに乗って回転しながらスキャンする従来方式よりも手間が掛からず、撮影も一瞬で行えるため、小さな子供やペットの全身3Dスキャンにも最適だという。
驚くほど簡単なVRコンテンツ制作
興味深かったのは、Web上でVR空間を作成できるサービス「STYLY」を用いたVRのデモンストレーション。特に、VRコンテンツの作成プロセスが驚くほど簡単で、オートデスクのクラウドベース3D CAD「Fusion 360」で、DiGITAL ARTISAN STUDIOの展示スペースをモデリングし、クラウド上の管理ツールにアップロードされたその3DモデルをFBXファイル形式でダウンロードして、STYLYに取り込むだけ。その他、あらかじめ3Dスキャンした人物の3Dモデルを配置したり、別のオブジェクトを配置したりといった作業がWebブラウザ上のSTYLYで簡単に行える。さらに、アドビの「Mixamo」で人物の3Dモデルにアニメーションを付けてそれを取り込んだり、音楽や動画を取り込んだりもできる。
技術の融合から生まれる新しいカタチ
展示コーナーで異彩を放っていたのは、3Dプリント技術と鋳造技術を活用したヒール「FORMLESS」である。デジタルアルティザン、JSR、キャステムによる共同プロジェクトから生まれたコンセプトモデル。この特徴的なヒールの形状は、コンピュータによるマスカスタマイズの考えを基にデザインされており、自動生成される有機的な形状(トポロジー最適化の手法を用いている)に対して、CGソフトで彫刻的な処理を加えている。こうして作り出された3Dデータを「Carbon」プリンタで造形し、それを原型にロストワックス精密鋳造で製造した。一緒に展示されていた解説文によると、あらかじめ足型を3Dスキャンしておき、それを基に「Grasshopper/Millipede」を使用して、足の加重を想定して配置された点からピラー(柱)を生成し、「Zbrush」で仕上げたという。
展示の中には「食」に関連するものもあった。その1つがチョコレートの彫像だ。コンゴの農園労働者が作った彫刻を3Dスキャンし、HPのハイエンド3Dプリンタで造形して、それを原型にシリコン型を作成。その型にチョコレートを流し込んで作られたものだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.