ホンダも電動化の主役はHV、2モーターシステムを新型「フィット」から小型車にも展開:エコカー技術
ホンダは2019年5月8日、東京都内で記者会見を開き、2022〜2025年に向けた四輪車事業の体質強化と電動化の取り組みについて発表した。ホンダ 代表取締役社長の八郷隆弘氏が登壇して説明した。
ホンダは2019年5月8日、東京都内で記者会見を開き、2022〜2025年に向けた四輪車事業の体質強化と電動化の取り組みについて発表した。ホンダ 代表取締役社長の八郷隆弘氏が登壇して説明した。
体質強化では、各モデルのグレードやオプションが増えすぎたことで低下している開発や生産、販売の効率を改善する。ハイブリッド車(HV)を対象に、部品やプラットフォームの共有化を進める「ホンダアーキテクチャ」を2020年投入のグローバルモデル(世界戦略車)から採用していく。HVの技術的な延長線上にあるプラグインハイブリッド車(PHEV)での採用も視野に入れる。また、これまで市場ごとにグレードやオプションが細分化していたのを、市場ニーズや規制動向が近い地域同士で共通化し、ラインアップを見直す。
電動化は、2モーターHVシステム「i-MMD」を小型車まで展開し、企業別平均燃費(CAFE)を改善していく。これまで小型車には1モーターHVシステム「i-DCD」を採用してきたが、幅広い車種で共有化して量産効果を高めるためにi-MMDに集中する。こうした取り組みにより、i-MMDのシステムコストは2022年までに2018年比25%低減し、ガソリンエンジン車と同等レベルも目指す。
増えすぎた仕様
会見に登壇した八郷氏や代表取締役副社長の倉石誠司氏は、四輪車事業の体質強化で「モデル数を減らすのではない」と繰り返し説明した。ホンダが増えすぎていると認識しているのは、モデルごとのグレードやオプション装備といった仕様の組み合わせの数だ。「例えば『シビック』というモデルだけでどれだけの種類があるかというと、他社と比べても多いのが現状だ。『アコード』も米国で発売した当初は3種類だった。地域ごとのニーズに応えて増やしてきたが過剰になっている」(八郷氏)。
また、倉石氏は「地域の要望に応えるのはいい面もあったが、販売台数が伸びない派生の仕様も出てきた。これを減らしていく。複数ある派生仕様のうち3分の1で売り上げの9割をカバーしている例もあった。販売面でも、派生の多さが売りにくさにつながっていた」と説明した。こうした現状を受けて、グローバルモデルは2025年までに仕様の派生数を2018年比で3分の1に減らす。この水準まで減らさなければ「グローバルモデルの強さが失われる」(八郷氏)。また、これまで金型の管理や段取り替えの負担が軽減するため、取引先のサプライヤーにもメリットがあるとしている。
軽自動車「Nシリーズ」、北米の「PILOT」など地域専用モデルについては「より強いモデルに集約、削減」(ホンダ)していくことで、開発、生産効率を高める。ホンダアーキテクチャを活用して派生仕様を作る方針だ。
各モデルの仕様の派生数を絞り込むとともに、ホンダアーキテクチャを導入することで、2025年までに量産車の開発工数を2018年比で30%削減する。ホンダアーキテクチャでは、エンジンルーム、コクピット、リア周りなど車両の7割を占める部分を共有領域とし、残りの3割となるエクステリアやインテリアなどの意匠部分はモデルごとに開発する。生産領域と製品開発が連携した効率化が主な目的となる。量産モデルや量産に近い領域の開発を効率化することで、将来技術の開発に工数を割り当てる考えだ。
四輪車の生産面でも効率化による体質強化を進める。欧州や日本をはじめとする各地域で生産能力の適正化を進めており、中国を除いたグローバルでの稼働率は、2018年の90%から2022年までにフル稼働となる見通しだ。北米でも生産体制の効率化を進め、モデルの派生数削減や各拠点の生産モデルの割り当てを見直していく。こうした取り組みにより、生産領域の費用を2025年に2018年比10%削減する。
電動化戦略の主軸は2モーターHVに
ホンダは2030年までにグローバルでの四輪車販売台数の3分の2を電動車にする計画を2016年に発表した。50%以上をHVとPHEVが、燃料電池車(FCV)と電気自動車(EV)が15%程度を占めるという見通しだった。この方針は大きく変えていないが、企業別平均燃費の改善はHVで、米国カリフォルニア州のZEV規制や中国のNEV法にはEVで対応していくと改めて明言した。FCVは開発を継続するが、インフラの普及やFCVの量産技術の熟成、コストの課題を踏まえて当面はEVに集中するという。
HVの取り組みでは、i-MMDの小型車向けシステムを開発し、2019年秋に世界初公開予定の「フィット」の新モデルから採用する。i-DCDの搭載車種もモデルチェンジに合わせて小型車向けi-MMDに切り替える。八郷氏はこの展開について「i-DCDの問題というよりも、数を束ねるにはシステムの共有化を進めなければならなかった。幅広い車種に展開することを考えるとi-MMDだった」と述べた。
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