スマートな工場を実現するのに必要なスマートな組織とスマートな思考法:IVI公開シンポジウム2019春(3)(2/2 ページ)
「つながる工場」実現に向けた取り組みを進めるIndustrial Value Chain Initiative(IVI)は2019年3月14〜15日、都内で「IVI公開シンポジウム2019-Spring-」を開催。今回はその中から、IVI 理事長の西岡靖之氏による講演「IVIM〜スマートな組織の思考法 ―つながるものづくりのメカニズム―」の内容を紹介する。
スマートなモノづくりを実践に進める「IVIM」
「IVIM」は、スマートモノづくりの実践戦略に位置付けられたもので「問題発見」「問題共有」「課題設定」「課題解決」の4つのサイクルを回すことで、スマートモノづくり化を実現していくというものである。それぞれのステージで具体的な取り組みなども示されている。例えば、「問題発見」ステージでは、「困りごとのヒアリング」や「困りごとカードの記述」などの取り組みを行い、「問題共有」のステージでは、「対象業務と場面の設定」や「役者とその活動の定義」などを行う。
IVIではこの各ステージでの具体的な行動を定めるだけでなく、チャートとしてそのチャートを埋めていくことで、これらの4つのステージでの活動を明確化できるようにしているのが特徴だ。具体的には16のチャート(16チャ)を用意している。IVIでは「緩やかな標準」作りにつながるように、それぞれの共通課題の解決を示す業務シナリオワーキンググループ(WG)活動を行っているが、このWG活動においても2018年度は16チャの活用を必須化したという。
西岡氏は「これらの活動により、現場の課題がそのままデータ化できるようになり、その活動の内容が蓄積できるようになる。データ化できればそのまま共有が可能となり、最終的に組織的な知見の醸成につなげることができる」と述べている。
「CIOF」の実現とその後
「データによりつながる世界ができた後にどうするかを考えた時に、つながる道具をもっと簡単にできないかということを考えた」(西岡氏)とし、IVIが関わって実現したのが「コネクテッドインダストリーズオープンフレームワーク(CIOF)」である※)。
※)関連記事:乱立する製造IoT基盤は連携する時代に、IVIが製造データ連携フレームワーク披露
「CIOF」は日本政府が提唱する「Society 5.0」や「Connected Industries(コネクテッドインダストリーズ)」を実現するために必要となる「製造プラットフォームオープン連携事業」として、産業データ共有促進事業費補助金を経済産業省から受けて、進められたものである。既存のプラットフォーム内のシステムやデータ設定などを大きく改変することなく、容易にデータ連携を実現するための仕組みで、2018年12月に仕様公開され、2019年3月4日に正式公開されている。
西岡氏は「CIOFには3つの特徴がある。1つ目はシンプルでつなぎやすいという点、2つ目は辞書が2つあるという点、3つ目はデータを受け渡す時に契約行為を発生させるという点が独自のポイントである」と述べている。
「CIOF」により「つながる」ことを簡単に行えるようにすれば、データの利用がさらに広がることになる。今後はデータが価値と直結する時代が来る中、これらのデータプラットフォームに決済機能などを取り入れ、データ契約と同時に金銭的な決済などが行われるような仕組みも検討を進める方針だという。
西岡氏は「生産現場の中でオープン、クローズをユーザー側が選択できる時代が来る。その中でモノの流れる世界とデジタルの世界の動きが限りなく一致していく世界となる。そうなるとマスカスタマイゼーションの世界からオープンカスタマイゼーションへと、さらに進んでいくと考えられる。つながる世界の仕組みがなければ、これらは実現し得ない」と語っている。
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