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モノづくりだけでは勝てない、必須になるプラットフォームとネットワーク効果製造業IoT(2/2 ページ)

「第18回国際ナノテクノロジー総合展・技術会議(nano tech 2019)」において「超スマート社会におけるオープン&クローズ 戦略、知財マネジメント」をテーマとした特別シンポジウムが開催され、東京大学 政策ビジョン研究センター 客員研究員シニア・リサーチャーの小川紘一氏が「オープン&クローズの戦略思想を必要とするIoT経済環境の到来」と題し講演を行った。

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デジタル時代に必要な3つの考え方

 こうしたデジタル時代では「モノづくりからアーキテクチャ思考へ」「オープン&クローズ戦略」「Two Sided Market戦略(二面性戦略)」「プラットフォームとネットワーク効果」などの新しいイノベーションモデルが大きなカギを握る。

 「PCなどのデジタル製品で、技術を開発し、基礎研究を行い、良い製品を作り出してもなぜビジネスでは勝てないのかという問いが1980年代の米国にあった」と小川氏は語る。ここで経済学者はさまざまな理論を考え出し、その中に2つのイノベーションモデルというものがある。これは、イノベーションには2種類あり、1つはコンポーネント自身のイノベーション(個別最適なものでPCや自動車なども含まれる)で、もう1つはコンポーネント相互の結合構造をダイナミックに変化させて価値形成するアーキテクチャ型(システム思考、全体最適)だ。

 「このアーキテクチャ型のイノベーションの割合が増えてきているのが大きな問題となってきている。いくら基礎研究を行い、良い製品を作っても、アーキテクチャ型が優位となる環境では、そちらが上位概念となり勝てなくなる。だからこそ、そういうアーキテクチャ型の環境では、オープンにするところとクローズとにするところを分けなければならない」と小川氏は強調する。ここで必然的に「オープン&クローズ戦略」が重要になってきている。

経路依存性の問題

 さらに、「経路依存性」という概念がある。クローズ領域を持った上で、徹底してオープン化し、利用コストゼロのプラットフォームを提供することで自己増殖的に市場拡大を図る。

 一方で収穫逓増をもたらす技術を選択させて他の技術を排除することにより「ユーザーをロックインする」「オープン化が結果的に寡占状態を作る」というものだ。この具体例が米国のGAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon.com)やUber、中国のBAT(バイドゥ、アリババ、テンセント)などで、これら企業の急成長の要因は、自己組織的、自己増殖的なプラットフォームを形成し、経路依存性を経てロックインし、寡占や独占に向かったことが大きいという。

 また、GAFAなど成長著しい企業では、その要因の1つとして「プラットフォームとネットワーク効果」が挙げられる。エコシステム型産業のネットワーク効果は、ある生産者やユーザーの製品や行動が別のユーザーや生産者が得る利益に大きな影響を与える効果である。プラットフォームにつながるユーザー、生産者が増えると、そのネットワーク効果が高まって利便性が増し、そのプラットフォーム利用のユーザーと生産者が指数関数的に増加する。つまり「生産手段を持つことではなく、価値の高いモノを持つからでもなく、ユーザーと生産者を結び付けて付加価値を高める仕組みとネットワーク効果をいかに創り出すかで競争力が決まる」と小川氏は語る。

 さらにIoT時代のオープンイノベーションが持つもう1つの意義は「ユーザーと生産者相互がオープンにプラグ&プレイでつながり、ネットワーク効果を作り出す経済環境を提供するところにある」と小川氏は述べている。

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