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他者への攻撃に加担するのは扁桃体と側頭・頭頂接合部の結合強度が影響:医療技術ニュース
情報通信研究機構は、攻撃行動への加担を調べる手段としてキャッチボール課題を考案し、人が攻撃に加担する程度とその人の社会的不安傾向の相関性を明らかにした。いじめなどを減らすための情報処理技術開発につながることが期待される。
情報通信研究機構(NICT)は2018年12月26日、攻撃行動への加担を調べる手段としてキャッチボール課題を考案し、人が攻撃に加担する程度とその人の社会的不安傾向の相関性を明らかにしたと発表した。NICT脳情報通信融合研究センター 研究マネージャーの春野雅彦氏らの研究グループによる成果だ。
研究グループでは今回、被験者4人がコンピュータ上でキャッチボールをし、2人が1人を攻撃する状況で、残り1人がどう行動するかを分析するというキャッチボール課題を考えた。この実験から、恒常的な攻撃欲求、仕返し、他者への同調、脅しへの服従、慣れといった要因のうち、他者への同調だけが有意な効果を持つことが分かった。また、対人反応性指標を用いて被験者に質問したところ、攻撃への同調の程度は、その人の社会的不安傾向に相関し、他者の感情を感じる共感性とは相関しないことが明らかになった。
次に、安静時fMRIを用いて、脳の領域間結合強度と攻撃に加担する程度が相関するかを調べた。その結果、不安に関係するとされる扁桃体と社会行動に関わる側頭・頭頂接合部、前帯状皮質と後帯状皮質の2つの結合強度だけが相関を示した。
これらの成果から、今後、加担を超えた攻撃行動に関する心と脳のメカニズムを解明し、いじめなどの攻撃行動を減らすための情報処理技術の開発や脳計測による効果検証などが期待される。
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