早く行きたいのに何度も赤信号、運転中の高齢者は怒りを感じやすい:医療技術ニュース
名古屋大学は、心理実験や脳計測を通じて、連続する赤信号に対して運転中の高齢者が怒りを感じやすいことを解明した。また、脳の前頭葉の実行機能が弱い高齢者ほど怒りやすいことが分かった。
名古屋大学は2018年7月11日、心理実験や脳計測を通じて、連続する赤信号に対して運転中の高齢者が怒りを感じやすいことを解明したと発表した。同大学大学院情報学研究科 准教授の川合伸幸氏らによる研究成果だ。
実験には、65〜74歳の高齢者20人と19〜31歳の学生22人が参加。大型の運転シミュレーターで全長4〜6.2kmの一般道路を再現し、そこを法定速度でできるだけ早く走行してもらった。赤信号走行後に、主観的な攻撃度を反映する怒りの行動尺度点を確認したところ、学生には変化がなかったが、高齢者は安静時よりも高くなった。なお、青信号走行後には両者ともに攻撃性得点に変化はなかった。
さらに、額より少し上の左右対称な位置から脳血流に流れる酸化ヘモグロビン量を測定した。その結果、左右ともにほとんど変化がなかった学生に対し、高齢者は赤信号で左の酸化ヘモグロビン量が右側より増加した。先行研究にて、左前頭葉の活動が右前頭葉より活性化するのは怒りの反映であることが示されており、今回の測定結果から、赤信号で連続して停止しなければならない場合、怒りを感じるのは高齢者に多いことが分かった。
これらの測定結果は、実験前に実施した前頭葉の実行機能の評価検査結果と相関があり、実行機能が弱い高齢者ほど怒りやすいことも判明した。
今後、実行機能を構成する幾つかの認知能力のうち、どの機能が特に怒りやすさと関連するのかを調べる研究が進むことで、運転中に怒りやすい人かどうかを事前に知ることができるようになる。さらには、怒りを抑制する研究や、車内で感情測定できる装置の開発などへの展開が期待される。
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