ニュース
血液検査でひきこもり傾向が明らかに、「治療法」の開発に期待:医療技術ニュース
九州大学は、ひきこもり傾向に関連する血中バイオマーカーを発見した。ひきこもりの病態解明の進展やひきこもりの予防、早期介入、栄養療法などの治療法開発に貢献することが期待される。
九州大学は2018年2月16日、ひきこもり傾向に関連する血中バイオマーカーを発見したと発表した。これは同大学大学院医学研究院 教授の神庭重信氏の研究グループによる研究成果だ。
同研究グループは、ひきこもりではないボランティア(主に大学生)と九州大学病院のひきこもり研究外来を受診したひきこもり者から採血をし、その血中物質のうち、血中の炎症関連マーカーの高値や、尿酸とHDLコレステロールの低値が、男女それぞれ異なる形で、ひきこもり傾向に関連していることを発見した。
さらに、これらの血中物質が他者への協力や信頼といった向社会的行動とも関連していることが、「信頼ゲーム」と呼ばれる経済ゲームを使った行動実験により明らかになった。
男子学生では、血中の尿酸およびHDLコレステロールの値が高い人ほど、相手を信頼し協調行動を取る傾向があり、HDLコレステロールの値が低い人ほど、ひきこもり回避傾向を有していた。
女子学生では、炎症マーカーとして知られる高感度CRPが高いほど、相手を信頼しなくなる傾向が見られた。また、凝固系マーカーとして用いられるFDPの値が高い人ほど、ひきこもり回避傾向が高くなることも見出された。
今回の研究成果は、生物学的因子がひきこもり傾向と関連する可能性を示唆する初めての報告となる。ひきこもりの病態解明の進展やひきこもりの予防、早期介入、栄養療法などの治療法開発にも貢献することが期待される。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 生物はなぜ眠るか、脳回路のクールダウンと記憶情報の整理のため
東京大学は、睡眠中に脳の回路がどのようにクールダウンされるのかを明らかにした。睡眠中に海馬から発生する脳波「SWR」がニューロン間のつながりを弱めて、海馬の神経回路をクールダウンし、記憶のキャパシティーを確保していた。 - 統合失調症の社会機能障害、神経回路の視床の体積異常が関与することを発見
東京大学は、統合失調症の社会機能障害に、大脳皮質下領域の視床の体積異常が関与することを発見した。また、社会認知機能を反映する課題の評価点や検査得点などの指標と、右視床の体積値が関係していることも確認した。 - うつ病の新たな治療法を発見、選択的セロトニン再取り込み阻害薬とは異なる仕組み
大阪大学は、うつ病の新たな治療メカニズムを発見したと発表した。セロトニン3型受容体が海馬のIGF-1分泌を促進することにより、海馬の新生ニューロンを増やし、抗うつ効果をもたらす。 - 大脳の回路を解明、単純な回路が繰り返した格子構造で並列処理
理化学研究所は、哺乳類の大脳皮質の第5層が単純な機能単位回路の繰り返しからなる六方格子状の構造を持つことを発見した。マイクロカラムが繰り返した回路による並列処理が、幅広い大脳機能を担うことが示された。 - カルシウムイオンが睡眠と覚醒を制御する
東京大学は、神経細胞のコンピュータシミュレーションと動物実験を組み合わせることで、睡眠・覚醒の制御にカルシウムイオンが重要な役割を果たしていることを明らかにしたと発表した。