数理モデルを用いて、ヒト皮膚並みの厚みを持つ3次元培養表皮を構築:医療技術ニュース
北海道大学は、数理モデルとそのコンピュータシミュレーション結果を模倣した培養容器を用いて、高機能3次元表皮の構築に成功した。ヒト皮膚の表皮並みに厚く、高い角層バリア機能を備えた高機能表皮となる。
北海道大学は2018年12月21日、数理モデルとそのコンピュータシミュレーション結果を模倣した培養容器を用いて、高機能3次元表皮の構築に成功したと発表した。ヒト皮膚の表皮並みに厚く、底部にポリエステルメッシュを敷かない培養容器の2倍もの角層バリア機能を備えている。同大学電子科学研究所 教授の長山雅晴氏らと、資生堂グローバルイノベーションセンターの研究グループによる成果となる。
研究ではまず、表皮細胞の分化や表皮幹細胞の情報などを取り込んだ、表皮恒常性の維持メカニズムを反映させた数理モデルを構築した。これを用いてコンピュータシミュレーションを実施したところ、表皮の構造や厚さは、表皮幹細胞の空間的分布と基底膜の構造に大きく影響されることが分かった。
具体的には、基底膜の構造が直線的な場合よりも、波のような構造をしている時に表皮が厚くなっていた。そのため、市販の表皮構築培養容器を使用し、その底部にさまざまなパターンのポリエステルメッシュを密着させ、簡易的に凹凸をつけた培養容器を作製した。この培養容器に細胞分裂を3回以上重ねた表皮細胞を播種し、市販の細胞培養溶液や一般的な表皮モデル培養手順を用いて12日間培養した。
こうして構築した表皮モデルの厚さを、HE染色法を用いて評価した。その結果、ポリエステルメッシュのない培養容器(コントロール)による表皮モデルよりも厚い表皮が構築されていた。分化マーカーなどを用いた免疫染色では、この表皮がヒト表皮のように正常に分化していることが分かった。バリア機能評価では、ヒト表皮のような細胞間脂質を含む厚い角層が形成されていることが判明した。
また、ポリエステルメッシュ周辺や上部にも増殖細胞が見られ、コントロールに比べて基底層の分布も広がっていた。これらの結果は、表皮細胞が基底部と認識できるエリアが広がったことで、表皮が厚くなり、バリア機能も高まったことを示唆する。
この3次元表皮モデルは、人間の生命を守る表皮のメカニズムや、老化に伴う乾皮症など皮膚疾患のメカニズムの解明につながる。さらに、皮膚外用剤や化粧品などの効果の評価ツール、再生医療などへの展開も期待される。
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