保護メガネメーカーが作ったスマートグラス、ソニーのホログラム導光板を採用:ウェアラブルニュース
スポーツ用アイウェアや産業用保護メガネなどを手掛ける山本光学は、軽量かつデタッチャブル式のスマートグラス「Versatile(バーサタイル)」を開発したと発表した。
スポーツ用アイウェアや産業用保護メガネなどを手掛ける山本光学は2019年1月15日、軽量かつデタッチャブル式のスマートグラス「Versatile(バーサタイル)」を開発したと発表した。ソニーセミコンダクターソリューションズのホログラム導光板ディスプレイモジュールを採用した光学ユニットと、快適な装着感で光学ユニットを保持できるグラスを組み合わせた製品となる。フレームは、18.6gの軽量タイプと、保護メガネタイプを用意している。「第5回ウェアラブルEXPO」(2019年1月16〜18日、東京ビッグサイト)で一般公開した後、同年3月にサンプル販売を始め、6月に正式発売する予定だ。
山本光学は、「SWANS」ブランドでスポーツ用アイウェアを、「YAMAMOTO」ブランドで産業用保護メガネなどを展開している。大阪府東大阪市を拠点に108年の歴史を持ち、大阪、淡路島、徳島の3拠点でメイドインジャパンの生産を行う中小企業だ。同社 社長の山本直之氏は「創業から100年以上産業用保護メガネなどを扱ってきた企業として、IoT、5G時代に向け進化したスマートグラスを開発したいと考えてきた。掛けやすい、現場で使える、快適に使えるVersatileはその成果となる。スマートグラスの新たな業界標準にしたい」と意気込む。
保護メガネのJIS規格に対応するスマートグラスは「業界初」
Versatileの開発で最も注力したポイントが「装着感」だ。専門的な光学性能に基づくレンズ開発と、そのレンズ性能を最大限に発揮する人間工学データを応用したフレーム設計までを社内で一貫して行える強みを生かし、作業中の動きによるズレを最小限に抑え、長時間の使用でも耳への負担や眼の疲れがないように仕上げた。
スマートグラスとしての映像表示は、ワンタッチでフレームに脱着できる光学ユニットを用いる。高輝度で透過率の高いホログラム導光板ディスプレイモジュールにより、視界を妨げない表示が可能だ。解像度は419×138画素で、表示色は緑単色になるが、256階調の表示が可能なので表現力は高い。仮想表示距離は8mで、透過率は85%以上を確保している。
フレームは軽量タイプと保護メガネタイプの2種類を用意した。保護メガネタイプは、保護レンズの内側に光学ユニットが入ることによる安全性や、透過率85%以上の光学ユニットにより、保護メガネとしてのJIS規格(JIS T8147)に対応できるという。Versatileの事業を担当する山本光学 執行役員 セフティ&レーザー・オプト事業部 事業部長の澤野倫宣氏は「保護メガネとして利用できるスマートグラスは業界初になるだろう。また、産業用保護メガネのメーカーとして、視力矯正用メガネの上からでも問題なく着用できることにもこだわった。成人の4割がメガネ利用者といわれており、メガネを使う人も使わない人も、同じスマートグラスを利用できるようにすべきと考えた」と説明する。
光学ユニットには、制御回路や加速度センサー、ジャイロ、照度センサーなどを組み込んでいるものの、画像表示をはじめとするアプリケーションの実行や、外部システムとの通信には、USB-Micro端子で接続するAndroidスマートフォンを用いる。電源供給はスマートフォンの他、専用の外部バッテリーも利用できる。スマートフォンのバッテリーを用いて光学ユニットを動作させる場合、9時間の実働が可能だった例もあるという。
アプリケーション開発のためのAndroid OS用SDKも用意した。「あらかじめアプリケーションを用意することも考えたが、顧客が現場でスマートグラスを利用する場合、その顧客が現在使っているシステムとの連携が必要になり、結局カスタマイズすることになる。システムインテグレーターなどと協力してそういった合わせ込みをしやすいように考え、SDKを提供することにした」(澤野氏)。
主な用途として想定するのは、倉庫内での物流作業、工場などにおける現場作業の支援、空港やホテルなどのセキュリティ、ミュージカルや歌舞伎などを観劇する際に字幕や解説を表示するエンターテインメントなどだ。
価格はオープンとしているが、実勢価格としては光学ユニットが10数万円、保護メガネのフレームが約5000円などになる見込み。山本氏は「数年後にはVersatile事業で、年間約10億円の売り上げを達成できるようにしたい」と述べている。
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