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世の中にないものこそ、早く出せ!――スマートグラスで市場を創るセイコーエプソンMONOistセミナーリポート(1/3 ページ)

2016年6月3日に開催されたMONOistセミナー「大手とベンチャーが語る『開発スピードが生み出すオンリーワン製品』」。セイコーエプソンが登壇し、新たな市場を創設したシースルーHMD「MOVERIO」の開発について語った。

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 2016年6月3日のMONOistセミナー「大手とベンチャーが語る『開発スピードが生み出すオンリーワン製品』」では、ユニークなオンリーワン製品を提案している各社のスピード感ある開発スタイルが紹介された。本稿では、2011年に世界初の両眼シースルーHMDを世に送り出したセイコーエプソンの講演「新規事業製品開発とその製品が実現した現場革新ついて」を中心に、各社のオンリーワン製品の開発を紹介する。

ビジュアルプロダクツのコミュニケーションを変える

 セイコーエプソンのルーツはウォッチ。市場のニーズや機能拡張に応じて、プリンタ、半導体、液晶など、必要な技術を獲得してきたという歴史がある。その背景にあるのは、同社の「ない技術ならば自分たちで作ればいい」という社風だ。「究極のウェアラブル」であるウォッチ以来、省エネルギー、小型化、高精度の「省・小・精の技術」という独自の強みを培ってきた。

 2009〜2015年度の同社の長期ビジョンでは、「省・小・精」の技術を極めてプラットフォーム化し、強い事業体となることを目指し、コア技術と企画から販売までを内製化する垂直統合型ビジネスモデルで成長してきた。

 数ある技術の中から、特に同社が独創の強みとして選んだのは、インクジェットプリンタを実現するための「マイクロピエゾ」、プロジェクタ、液晶技術を応用した「マイクロディスプレイ」、ウォッチのために開発した水晶デバイスと半導体を融合させた「センシング」、ウォッチ組み立ての自動化から始まった「ロボティクス」の4つだ。講演に立ったセイコーエプソン ビジュアルプロダクツ事業部 HMD事業推進部 部長の津田敦也氏は「お客さまが欲しいものを何でも作ればいいのではない。セイコーエプソンの強み、コア技術を生かすことができ、かつ、お客さまに喜んでいただける新しい商品を創出しようと考えた」という。


セイコーエプソン ビジュアルプロダクツ事業部 HMD事業推進部 部長 津田敦也氏

 世界初の両眼シースルーHMDとして誕生した「MOVERIO(モベリオ)『BT-100』」は、マイクロディスプレイの技術を活用し、「ビジュアルプロダクツのコミュニケーションを変えよう」と作り上げたオンリーワン製品なのだ。


同社が強みとする技術とMOVERIO(出典:セイコーエプソン)

MOVERIOの概要(出典:セイコーエプソン)

 HMDを開発するにあたっては、2つの選択をしなければならなかった。まずクローズ型か、周りが見えるシースルー型か。「映画ならクローズ型がいい。しかし部屋で見るならプロジェジェクタがあるし、外で両目、両耳を塞いだ状態でどれだけ映画を見るだろうか。技術的には、クローズ型のHMDは作りやすいが、ならばあえて難しいもの、世の中にないものから作ろう」とシースルー型を選択した。

 もう1つの選択は民生市場か、業務市場か。「使い方が分かりやすいのは業務系。社内の議論でも、業務系の方が良いという声は多かったが、業務系は限られた世界にしか発信できない。しかしエプソンブランドで民生市場に出せば、世界中に知らしめることができる」。こうして、初代MOERIOは、シースルー型、民生市場向けとして開発された。

 大企業が検討や調査を重ねている間に、海外やベンチャーに先を越されてしまう時代。「まず出そう。出さなければフィードバックは得られない」と、1年半という短期間で開発。「シースルー モバイルビューアー」として、今でいうスマートグラスを世界に先駆けて市場投入したのだ。

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