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世の中にないものこそ、早く出せ!――スマートグラスで市場を創るセイコーエプソンMONOistセミナーリポート(2/3 ページ)

2016年6月3日に開催されたMONOistセミナー「大手とベンチャーが語る『開発スピードが生み出すオンリーワン製品』」。セイコーエプソンが登壇し、新たな市場を創設したシースルーHMD「MOVERIO」の開発について語った。

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早い市場投入が引き寄せた理解者とアイデア

 早く民生市場に投入し、多くの人に知ってもらった結果、賛否両論がある中で理解者も出現した。例えば、聴覚障害者が安全に避難するために使えるのではないかというアイデア。スマホで避難路の情報を提供するというアイデアはあるが、いうなれば「歩きスマホ」だ。特に聴覚障害者は、目からの情報が音でもあり、スマホを見ていては非常に危険である。周りが見えて避難のガイダンスも見えるなら、聴覚障害者が安全に避難できるというわけだ。実証実験を行うと「こういうものが欲しい」と手応えを得た。


理解者たちからアイデアを得る(出典:セイコーエプソン)

 また医療、特に外科手術の現場で活用するというアイデアもあった。現在の外科手術は、モニターの映像を見ながら行う。患者さんの体を見ながらモニターも見られれば、スキル差を埋めることもできる。その他、センサーを取り付けて物流のナビゲーションに使うなど、多くの理解者と活用アイデアがものすごいスピードで現れた。「従来ならば、市場に出す前にこのような調査をしていただろう。しかしまず世に出したことで、幅広い分野の情報を収集することができ、より踏み込んだ活動をすることができた」と津田氏はいう。

 小型・軽量化し、各種センサーを搭載した2代目「MOVERIO『BT-200』」は、2014年に発売。このときから「スマートグラス」と呼称した。


BT-200誕生へ(出典:セイコーエプソン)

 アプリケーション開発環境を提供開始したことで、世界のさまざまなコミュニティーで、アプリケーション開発が活発に行われるようになった。各種サービス市場においても、HMDを利用した映像情報提供のニーズが拡大しており、例えば美術館のガイダンス、聴覚障害者にも楽しめる映画館、観光ガイドやテーマパークのアトラクションなど、いろいろな分野で活用が検討されている。2016年2月には更に進化したコンシューマー向け「BT-300」を発表。今秋には商品化される予定だ。

 業務市場向けとしては、2015年9月に「MOVERIO Pro『BT-2000』」を発売した。


MOVERIO Pro BT-2000(出典:セイコーエプソン)

 これは数々の実証実験で得られた要求を実現したものだ。現場作業者のスキルの共有や遠隔地での現場作業の共有、また作業手順の表示やオペレーターによる作業指示などに活用され始めている。

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