平成最後のETロボコンはライントレースに画像認識やAIが融合〜ETロボコン2018チャンピオンシップ大会〜:ETロボコン2018(3/3 ページ)
平成最後となる2018年のETロボコンでは、デベロッパー部門のアドバンストクラスに、コースに描かれた数字を読み取る「AIアンサー」が新たに導入された。「ブロック並べ」にも変更が加えられさらに難易度が上がったが、今回のレース結果はいかに。2回目となるガレッジニア部門と併せて、各チームの奮戦を動画とともに紹介する。
伝統的なあの道具がまさかのネット対応!
新しい価値を創造できるエンジニアの育成を目的とした「ガレッジニア」部門は、今回が2回目の開催。パフォーマンス動画をYouTubeに公開し、一般視聴者からの「いいね」の数と、審査員の評価を総合し、上位4チームがチャンピオンシップ大会に出場した。なお大会の順位は、当日の8分間のプレゼンテーションへの評価のみで決定される。
ガレッジニア部門のテーマは自由。与えられた課題をどう解決するかが問われるデベロッパー部門に対し、ガレッジニア部門は自分で課題そのものを考える競技であるといえるだろう。ルールで決まっているのは、センサーとアクチュエータを各1つ以上搭載するということのみ。ただ、部品のコストは合計50万円以下に抑える必要がある。
優勝したのは、「稚内北星学園大学INNN」(稚内北星学園大学情報メディア学部)チーム。このチームが開発したのは、なんとスマート化した石臼「Aamako Jato」だ。モーターやセンサーが組み込まれており、音声認識による遠隔操作なども可能とのこと。デモでは、稚内とネット中継でつなぎ、実際に動かす様子を披露していた。
開発者の母親はネパールに住んでいるとのことで、このシステムは「遠く離れた家族の絆を強くしたい」という思いから開発が始まったのだという。将来的には、高齢者のキッチンを自動化して手伝うようなことも考えているそうだ。
2位の「AMazing Sour」(日立オートモティブシステムズ)は、居酒屋で靴を自動で出し入れしてくれるという実用的なシステムを開発。入店時に指紋を登録しておくと、会計後に靴が出てくるので、自分の靴がどれか分からなくなる心配が無い。人間がそのまま乗っても壊れないよう、運搬ロボットの機構が工夫されている点も良かった。
いずれも着眼点がユニークで、システムの完成度も良かったのだが、今回は4チームともテーマが問題解決型になっていて、2年前まで行われていた「イノベーター」部門とあまり違いが分からなかったのはやや残念なところ。せっかくのガレッジニア部門だ、もっと一発芸に近く、実用性無視なものにも挑戦して欲しいと思う。
順位 | チーム名 |
---|---|
1位 | 稚内北星学園大学INNN(稚内北星学園大学情報メディア学部) |
2位 | AMazing Sour(日立オートモティブシステムズ) |
3位 | 追跡線隊HiICSイエロー(日立産業制御ソリューションズ) |
表 ガレッジニア部門の総合結果 |
なお、デベロッパー部門のプライマリークラスには、22チームが出場。後半の難所は、Lコースが「ルックアップゲート」、Rコースが「シーソー」となっていたが、シーソーでバランスを崩すシーンが目立ち、うまく通過できたのは4チームしかいなかった。今回の競技の結果は以下の通りだ。
順位 | チーム名 |
---|---|
1位 | チーム八草(愛知工業大学) |
2位 | RoboOhta + M & C(群馬大学理工学部&日本精工ステアリング&アクチュエータ技術センター) |
3位 | KERT-B3(九州産業大学理工学部情報科学科) |
表 プライマリークラスの競技順位 |
今後も変わり続けるETロボコン
表彰式において、ETロボコン実行委員長の星光行氏は、「ETロボコンはモデルあっての競技会」とコメント。今回、デベロッパー部門アドバンストクラスのモデル審査では、最高評価のExcellentとGoldが無く、SilverとBronzeのみだったが、「むしろ伸びしろがあるということ。次回は競技とモデルで完全優勝を目指して欲しい」と期待した。
2019年の競技内容については今後検討していくことになるが、技術委員長の江口亨氏によれば、「2019年も画像認識とAIは使う方針」で考えているとのこと。「組み込み分野も、今の時代はきれいに制御しているだけでは不十分。今後も引き続き、新しい要素を取り込んでいきたい」と述べ、新しい時代に適応したETロボコンを目指す考えを示した。
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