技術はこれから!でも若さいっぱいの沖縄大会、ETロボコンが業界底上げの起点に:ETロボコン2017沖縄地区大会レポート(1/3 ページ)
「ETロボコン2017」の沖縄地区大会が2017年9月30日に開催された。企業参加が約半数を占めるETロボコンだが、沖縄地区大会は学生が中心。技術レベルはあまり高くないかもしれないけれど、若さいっぱいのETロボコンレポートをお送りする。
組み込み分野のロボットコンテスト「ETロボコン(正式名称:ETソフトウェアデザインロボットコンテスト)2017」の沖縄地区大会が2017年9月30日に開催された(図1)。
ETロボコンとは、5年後、15年後に世界をリードするエンジニアの育成を目的としたロボット競技会。11月に横浜で開催される全国大会(チャンピオンシップ大会)を目指して、12のエリアに分かれて地区大会が開催された。
沖縄地区は全国の中で技術レベルは高いとはいえないものの、参加者の真剣なまなざしが印象的な大会だった。沖縄地区の特徴やETロボコンが沖縄にもたらす意義を含め、大会の様子を紹介しよう。
制服姿の学生も多い会場、企業参加はゼロ
沖縄地区大会の当日、会場に入ってまず感じたのが、参加者の若さだ。黄色のTシャツを着ている実行委員や引率の教官を除くと、制服姿の高校生も多く、年齢層はかなり低い(図2)。
図2 沖縄地区大会の特徴は、参加者の若さ。今回は企業参加はなく、特別枠を除くと全て学生チームだった。高校生チームも2チームあった。大会ボランティアとして、地元の工業高校の学生が多く協力していた(クリックで拡大)
それもそのはず。特別枠で参加した「特定非営利活動法人 フロム沖縄推進機構チーム」を除くと、全て学生チームである。大学や職業能力開発大学校、専門学校、高校から合計9チームが競技に参加した。
2016年の全体実績では、ETロボコンに参加するおよそ50%を企業チームが占めるから、企業チームの少なさは沖縄の特徴だ(関連記事:モデル審査をしない史上初のETロボコン!? 新設の「ガレッジニア部門」とは)。沖縄地区大会は2010年に第1回が開催され、2017年で第8回となる。その間に参加した企業チームは、わずか4チームにとどまるという。
沖縄地区大会を観戦していた荒木泰晴氏(ETロボコンを主催する一般社団法人組み込みシステム技術協会の研修委員長)に話を聞くと、「ETロボコンの大きな特徴は、企業の技術者と学生が一緒に競技し、技術を高め合う交流型大会であること」だという。その観点では、沖縄地区の現状はもの足りなく感じてしまう。
なぜ、沖縄地区は企業参加が少ないのだろうか? 会場で複数の方に話を聞いてみたが、答えはさまざまだった。「組み込み開発に携わる企業が少ないこと」や、「人材育成や技術研修に手がまわっていないこと」「業務外のイベントに参加するリソースが足りていないこと」「受託型のソフトウェア開発が多く、自主開発を手掛ける企業が少ないこと」などなど。
こういった言葉を聞くと心配な気持ちになってしまうが一方で、15歳未満の「年少人口」の割合が日本で最も高く(2015年の国勢調査)、若い世代が多いことが沖縄の大きな魅力だ。沖縄地区大会実行委員会の運営委員である久松弘幸氏は、「特に沖縄では、学生に焦点を当てた人材育成が業界底上げの鍵」と語る(図3)。
図3 ETロボコンの特徴は、企業の技術者と学生が一緒に競技し、技術を高め合う交流型大会であること。会場でも、社会人の方が学生に話し掛け、教える姿があった。今回は企業参加は無かったが、次回は多くの企業が参加し、学生に良い刺激を与えることに期待したい(クリックで拡大)
モノづくりの土壌ができているとは言いがたい沖縄では、企業に就職して初めて開発に携わる形だけでは、“広がり感”を生み出すことは難しい。そこで、「設計からスタートして最終的に納品(出場)するという開発の一連の流れ」を、ETロボコンを通して学生の段階から体験してもらうことが、欠かせないとの考えだ。「ロボコンをいわば“くさび”にして、モノづくりやプログラミングなどへ幅広く興味を広げていけるよう、参加する学生をサポートしていきたい」(同氏)。
実は、沖縄ではここ数年の間に、ETロボコン以外にも「モノづくり」をキーワードにしたさまざまなイベントが開催されるようになってきた。例えば、「デジラボおきなわ クリエーターズキャンプ」や「海洋ロボットコンペティションin沖縄」、「WRO(世界ロボットオリンピック)沖縄大会」といったイベントだ。閉塞感のあった沖縄の雰囲気が、若い世代を中心に変わりつつあることを付記しておきたい。
さて、前置きが長くなってしまったが、次のページから競技結果の紹介に移ろう。
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