魅せる! 笑わせる! 新設「アーキテクト部門」に大注目 〜ETロボコン2013チャンピオンシップ大会〜:ETロボコン・リポート(1/5 ページ)
「アーキテクト部門」が新設され、2部門制に生まれ変わった「ETロボコン2013」のチャンピオンシップ大会がパシフィコ横浜で開催された。今回も多数の画像と動画を交えて見どころをくまなくリポートする!
LEGO社の「MINDSTORMS NXT」を使ったロボット競技会「ETソフトウェアデザインロボットコンテスト 2013(ETロボコン2013)」のチャンピオンシップ大会(全国大会)が2013年11月20日、パシフィコ横浜にて開催された。12回目の開催となる今大会では、従来とは全く異なる競技として「アーキテクト部門」を新設。これまでの競技は「デベロッパー部門」として残し、2部門による新体制のETロボコンがスタートした(関連記事:今度のETロボコンは“2部門制”に! レッドカーペットで自らを表現せよ)。
アーキテクト部門は初めての競技ということで、主催者も参加者もまだ手探りの状態だっただろうが、各チームのパフォーマンスはなかなか見応えがあって、会場は大いに盛り上がった。どんな様子だったのか、早速当日の模様をお伝えしたい。
新設されたアーキテクト部門の狙い
従来のETロボコン(そして、今回のデベロッパー部門)の大きな特徴は、「ソフトウェア勝負」であることだ。使用するロボット(“走行体”と呼ばれる)は全チームで共通。使用する電池まで同じものが支給されるので、ハードウェアの性能は各チームで全く違いがない。詳しくは後述するが、同じハードウェアでも、ソフトウェア次第で走行スピードに大きな差が出てくるのは興味深い。
ただ、他の多くのロボコンと違うのは、当日の競技結果が良いだけでは優勝できないということ。ETロボコンは、組み込み分野の若手エンジニアに対する教育機会として考えられているため、開発における分析・設計モデルについても審査し、その総合点で評価されるのだ。例えば、前回の優勝チームは競技結果では第5位だったものの、モデル審査が第2位だったため、総合点でトップに立った(関連記事:リタイア続出! “魔の第1コーナー”で一体何が? 〜 ETロボコン2012チャンピオンシップ大会〜)。
ETロボコン実行委員会で運営委員長を務める小林靖英氏は、「これまではモデリングに特化した10年だった。モデリング開発を広めようとしてきて、ある程度成果も見えてきた」と語る。ではなぜ、いま新部門なのか。
「アーキテクト部門では、これから5年後、15年後に活躍するような人材を育てたい。これまでの大会では、まず『課題』が与えられて、それをどうすれば早く正確に解決できるかを追求してきた。もちろんそれは依然として重要なので継続していくが、新部門では『何を作るか』というところから考えていく。企画するエンジニア、生み出すエンジニア、ビジネスでもうけるエンジニア、そういう人たちを育成したい」(小林氏)
日本のメーカーは技術で勝ちながら、製品で負ける例も多い。例えば、得意とされるロボット分野でも、家庭用のロボット掃除機では製品化が遅れ、米iRobot社の「Roomba(ルンバ)」に市場を押さえられてしまった。高品質な製品を開発するだけでは、世界の中で勝てない。何を作れば売れるのか、求められているのは企画力であり、そこが日本の弱点でもある。アーキテクト部門の設置は、そうした現状への危機感の表れだろう。
さて、それではアーキテクト部門について、具体的にルールを見ていこう。
まずフィールドは、前半の「ベーシックステージ」と後半の「パフォーマンスステージ」で構成。ベーシックステージは従来同様、ライントレースのコースになっており、ここを1分以内に完走してから、パフォーマンスを開始することになる。1分以内に完走できなくてもパフォーマンスは行えるが、その場合は点数が低くなる。アーキテクト部門は、ベーシックステージを完走できる技量が前提といえる。
パフォーマンスで何を披露するかは、各チームで自由に考えて決める。パフォーマンスステージは2.79×2.74mの広さがあり、必要ならば大道具的な装置を用意しても構わない。ただし、装置の設置や撤収も評価の対象となるので、作業が速やかに終わるように工夫する必要がある。競技を開始する前に、パフォーマンスについて説明するプレゼンタイムも2分間用意されている。
チームの順位は、企画審査(100点)、一致性審査(100点)、魅力審査(200点)の合計点で決められる。企画の内容について事前に評価するのが企画審査。残りの2つは当日のパフォーマンスを見て採点されるもので、一致性審査ではどれだけ企画書通りにできたかを評価、魅力審査ではパフォーマンスの「すごさ」を評価する。点数配分を見て分かるように、最も重視されているのは観客へ与える印象である。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.