見えてきたスマート工場化の正解例、少しだけ(そもそも編):いまさら聞けない第4次産業革命(28)(3/3 ページ)
製造業の産業構造を大きく変えるといわれている「第4次産業革命」。本連載では、第4次産業革命で起きていることや、必要となることについて、話題になったトピックなどに応じて解説します。第28回となる今回は、スマート工場化において見えてきた正解例について前提となる話を少しだけまとめてみます。
スモールスタートからのスケーリング
「事業インパクトが大きな課題解決から考える」という他には何があるのでしょうか。
なるほど、なかなか面白いわね。他には何があるの?
例としては今話をしたものと重複しますが、スモールスタートからのスケーリングということですね。
なるほど。確かによく言われているわよね。
この連載の印出さんとの話でも何回も出てきましたけど、やっぱりこのスマート工場への取り組みでやみくもに大きな投資をするのは企業としては難しいと思います。だから、まずは先ほどの「簡単IoT」ではないですけど、スモールスタートで成果を証明できることが大事かなと。
そうよね。
でも、やってみて思ったんですが、スモールスタートのものばかりが乱立しても、バラバラのままで、発展性がないんですよね。さっきの話で言えば「機械の様子が離れていても分かりました。はい、終了」ではもったいないと思ったんです。
確かに。
それで、もともと「止めない」ということが目的だったので、機械の停止状況だけを取っていたのを、作業データを全て取れるようにしました。それで、作業品質のばらつきなどが分かるようになりました。ただ、工具の破損の予兆などは分からなかったので、新たに振動センサーなどを追加で設置して、今本当に機械が止まらないように挑戦をしているところです。
すごいわね。着実に進化していると思うわ。
ですから、また先ほどの話に戻りますが、目的が大事ということかなと思ったんです。大きな目的を達成するための実証としてのスモールスタートということですね。そうするとスモールスタートで成功した先にスケーリングしたり他の実証結果と結び付けたりできると思うので。今の取り組みも半信半疑のところがあったので最初からある程度この流れを見越して投資しておけばよかったと思うところもあります。
スマート工場化は「つながる工場」などとも言われていますが、まさにポイントは「つないでいく」ということだと考えます。これらのスモールスタートの取り組みをより発展性のある形へつなぎ、それらの工程間をつなぎ、そして工場間、企業間、業種を超える範囲にまでつないでいく。その中で、従来にない最適化を進めていくということになります。
トップダウン型の欧米の企業などでは、上位の仕組み作り、枠組み作りからこうした取り組みを進めています。しかし、現場が強さの源泉である日本の製造業では、トップダウン型で全てを進めるのは向かないのではないでしょうか。ボトムアップ型である程度を進めながら、これらを有機的につないでいき、最終的に意味のある形にまとめていくという流れが必要だと考えます。
そういう意味では、現場の技術者でも、工場の持つ課題や企業の持つ課題や業界の持つ課題に対して、それを細分化していく中で、今の機器の改善はどういう位置付けを持つのかというマクロとミクロの両面を結び付ける力が重要になってくるのではないかと見ています。
さて今回はスマート工場に向けたそもそもの必要となるポイントについてあらためてまとめてみました。次回も最新の動向に合わせてタイムリーな話題を取り上げたいと思います。
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