検索
連載

見えてきたスマート工場化の正解例、少しだけ(そもそも編)いまさら聞けない第4次産業革命(28)(2/3 ページ)

製造業の産業構造を大きく変えるといわれている「第4次産業革命」。本連載では、第4次産業革命で起きていることや、必要となることについて、話題になったトピックなどに応じて解説します。第28回となる今回は、スマート工場化において見えてきた正解例について前提となる話を少しだけまとめてみます。

Share
Tweet
LINE
Hatena

スマート工場の成功のポイントとは

 矢面さんは印出さんのところに年末のあいさつに来たようです。

photo

印出さん、こんにちは。2018年も1年間本当にお世話になりました。


photo

あら矢面さん、こんにちは。こちらこそお世話になったわよ。さまざまな課題に前向きに取り組む矢面さんに元気をもらったわ。


photo

印出さんとのお付き合いも気付けばもうすぐ丸3年になりますね。そこで私なりに振り返ってみたんです。グーチョキパーツで取り組んできたことも含めて。


photo

あら、どういうこと?


photo

いろいろお話を伺って、取り組んできた中で、スマート工場についても、成功するためにはいくつかの条件があって、それがおぼろげながら見えてきたように思うんです。


photo

まあ、面白いわね。ぜひ教えていただけるかしら。


photo

いつも教えてもらってばかりですけど、今日は私が教師役ということで。


photo

それは中身を聞いてからね。


何よりも重要な課題と解決の目的

 さて、矢面さんが得たスマート工場の成功のポイントとは何でしょうか。

photo

まず、大事だなと感じるのが、課題認識と目的ですね。いろいろなプロジェクトをグーチョキパーツでもやってきましたが、続けられて、成果が出ているのは、課題に直結しているものだけですもん。


photo

「目的が大事」はよく言われるわよね。


photo

いや、IoT活用やスマート工場に対するさまざまな技術を試すということは大事だと思うんですけど、そもそも最初から何のためにやるか分からないものは「こんな技術が使えるとは面白いね」で終わるケースが多くて。


photo

例えば、グーチョキパーツではどういうものが続いているの?


photo

正直、大したものができているわけではないんですけど、1つ今も続いているのは、ボトルネック工程の遠隔監視ですね。金属加工の中で古い工作機械を使っている工程があるんですけど、よく工具の摩耗や劣化などで、止まるものがあったんですね。必須の工程ですけど加工に時間がかかるので、作業員が離れる場合も多いんですが、気付けば止まっていたとかでボトルネックになっていたという。


photo

それをどうしたの?


photo

リードタイムを短縮するために本当は「止まらないようにしたい」ということがやりたかったんですが、いきなりは難しいのでまずは「止まったら気づいてすぐに対応できるようにしたい」ということを目的において、遠隔監視ができるようにしました。まあ、第15回でも話題になったように、まずは「簡単でシンプルなIoT」でいいかなと。


photo

効果はあった?


photo

ありましたね。というか、出るように頑張ったといいますか。とにかく機械の稼働状況を遠隔で見えるようにして、止まったらすぐに対応するように運営体制を組みました。それは、すぐに成果が出ましたね。今は、当初の理想としていた「止まらない」ために、予兆監視や予兆保全に発展させたいと思っています。


 スマート工場化の取り組みの中で、よく注意すべき点としていわれるのが「IoTやスマート工場などは手段であって目的ではない」ということです。技術ありきで入ると技術を理解した段階で目的を失います。重要なのは、生産ラインや工場、事業、企業経営においての課題を解決することになります。

 課題として大きなものをブレイクダウンし、その達成の手段の1つとしてスマート工場化やデジタル化があるという立ち位置で進める必要があると考えます。その際にはより事業インパクトが大きな取り組みから行うべきでしょう。

 例えば、高級商材で、顧客が待ってでも買ってくれており、単体での採算が取れている商材に対して、生産リードタイムをガリガリ削るということは本当に必要なのでしょうか。生産リードタイムを削ったことで、新たなビジネスモデルが立ち上げられ、新たな収益を生み出すことができるのであれば、やるべきだと思いますが、やってもやらなくてもそれほど変わりがないのであれば、それほど意味があるとは思えません。「より多くの需要に応えなければならない」「より多様なニーズに応えていく必要がある」「人手不足に対応していかなければならない」など、事業インパクトの大きな目的から考えていくことが重要だと考えます。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ページトップに戻る