部門思考は部分最適か、製品の多様性と製造効率を両立する標準化とは:いまさら聞けない第4次産業革命(26)(1/3 ページ)
製造業の産業構造を大きく変えるといわれている「第4次産業革命」。本連載では、第4次産業革命で起きていることや、必要となることについて、話題になったトピックなどに応じて解説します。第26回となる今回は、スマートファクトリー化などで求められる「一体型モノづくり」を切り口に「多様性への対応」について考察してみたいと思います。
製造業の産業構造を大きく変えるといわれている「第4次産業革命」。本連載では、第4次産業革命で起きていることや、必要となることについて、話題になったトピックなどに応じて解説します。第26回となる今回は、スマートファクトリー化などで求められる「一体型モノづくり」を切り口に「多様性への対応」について考察してみたいと思います。
本連載の趣旨
本連載は、「いまさら聞けない第4次産業革命」とし、第4次産業革命で製造業が受ける影響や、捉える方向性などについて、分かりやすくご紹介したいと考えています。ただ、単純に解説するだけでは退屈ですので、架空のメーカー担当者を用意し、具体的なエピソードを通じて、ご紹介します。
※)本連載では「第4次産業革命」と「インダストリー4.0」を、意味として使い分けて表記するつもりです。ドイツ連邦政府が進めるインダストリー4.0はもともと第4次産業革命という意味があります。ただ、本稿では「第4次産業革命」は一般用語として「IoT(モノのインターネット)による製造業の革新」を意味する言葉として使います。一方で「インダストリー4.0」はドイツでの取り組みを指すものとします。
本連載の登場人物
矢面 辰二郎(やおもて たつじろう)
自動車部品や機械用部品を製造する部品メーカー「グーチョキパーツ」の生産技術部長兼IoTビジネス推進室室長。ある日社長から「君、うちも第4次産業革命をやらんといかん」と言われたことから、話が始まる。多少優柔不断。印出研究所に入り浸っている。
印出 鳥代(いんだす とりよ)
ドイツのインダストリー4.0などを中心に第4次産業革命をさまざまな面で研究するドイツ出身の研究者。第4次産業革命についてのさまざまな疑問に答えてくれる。サバサバした性格。
*編集部注:本記事はフィクションです。実在の人物団体などとは一切関係ありません。
前回のあらすじ
第25回:「それでも製造業にとって“スマート工場化”が避けては通れない理由」
あらすじ背景
従業員200人規模の部品メーカー「グーチョキパーツ」の生産技術部長である矢面辰二郎氏はある日、社長から「新聞で読んだけど、君、うちも第4次産業革命をやらんといかん」と言われます。しかし、「第4次産業革命」といわれても「それが何なのか」や「どう自分たちの業務に関係するのか」がさっぱり分かりません。そこで、矢面氏は第4次産業革命研究家の印出鳥代氏に話を聞きに伺うことにしました。
さて前回のおさらいです。前回は「生産性の高い普通の工場」と「生産性の低いスマート工場」という現在の状況を踏まえて、「そもそもスマート工場化って必要なの?」という点について考察しました。
現在の状況だけを見ると、日本の多くの工場で改善活動によって磨かれたプロセスはIoT(モノのインターネット)などに頼らなくても、世界最高クラスの品質となっており、スマート工場化を進める海外の工場に比べても進んでいるということでした。しかし、それでも印出さんは「スマート工場化は避けて通れない」と主張していたんでしたね。
道のりは異なっても最終的なゴールはほぼ同じよ。インダストリー4.0などで目指す1個1個の製品を大量生産の効率性で実現する「マスカスタマイゼーション」が現状で目指す理想の姿だとされているわ。これを実現するためにはスマート工場化は前提となるもの。
今後、さらに消費者の要望が多様化する中で、これらに最適に応えながら、効率的なモノづくりを実現していくためには、IoTやAIなどのデジタル技術の活用は欠かせないものとなります。その目指す姿がマスカスタマイゼーションなどといわれているわけですが、これを実現するためには、物理的な生産ラインも受発注に合わせて柔軟に変更できるような仕組みが必要になります。そのためにスマートファクトリー化が必要になるというわけでしたね。
気を付けなければならない点は、目先の生産性などに目がくらんで、伸び代を見逃してはいけないという点ね。スマート工場化によるデジタルの価値なしに、抜本的な改善は可能なのかしら。
そして、スマート工場化へのアプローチについては、各国、各企業によって異なるために、どこがどこに対して遅れているというよりも、目指すべき理想に対して足りないところを補っていくという発想が必要だという話でしたね。
スマート工場化に関して言えば、現状で置かれている立場はそれぞれが大きく異なっているけれど、目指す理想像は同じという状況だと思うわ。それに対して、何から足りない部分を埋めていくのかということを考えるのが重要よ。それぞれに異なるアプローチがあっていいのよ。
さて、今回は第22回でも触れた「設計と製造の壁」とそれを超えた一体型モノづくりについて考えてみたいと思います。
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