航空機製造でも進むスマート工場化、三菱重工と川崎重工の取り組み:モノづくり最前線レポート(2/2 ページ)
航空、宇宙関係の技術を紹介する展示会「国際航空宇宙展2018東京」では、最新の航空機製造技術に関するセミナーが開催された。三菱重工業と川崎重工業の最新の航空機製造についての講演内容をお伝えする。
生産能力を強化する川崎重工
川崎重工の田村氏は、最近開発した機種に適用した生産技術、将来の方向性などを紹介した。
川崎重工の航空宇宙事業の売り上げ構成比は21%で、機体部門と他部門(ガスタービン、機械)に含まれる航空機エンジンを合わせると約3割が航空宇宙システムの売り上げとなる。防衛省の輸送機や哨戒機や民間機を含め、さまざまな航空機の機体製造、インテグレーションなどを担う。民間機の分野ではボーイングの777、777X、787などの主力コンポーネントや、その他ヘリコプターの完成機を製造。エンジンはロールスロイスなどと技術提携しコアパーツの製造を担当している。
製造拠点は岐阜、名古屋第一、名古屋第二、西神、明石の5つの工場が主力となる。また、最近事業組織を改編し、機体とエンジンの部門を統合して航空宇宙システムカンパニーとした。
787の生産工場は名古屋第一工場で、複合材の胴体の部品から組み立てまでを一貫して対応している。製造方法は同社が担当する胴体構造部位において複合材一体成形胴体を採用した。
777Xでは前部および中部胴体パネル、主脚格納部、後部圧力隔壁、貨物扉の分担製造を担当しており、新しく建設した名古屋第一工場777X組み立て工場で最終組み立てを行う。777X組み立て工場では、自動で穿孔位置を認識して作業を行う自社製ドリルロボットの導入や、打鋲の対象範囲が拡大したオートリベッター(自動打鋲機)など、全社の技術シナジーを発揮し開発した最先端の画像センシング技術や制御技術を駆使した新規開発設備を導入して自動化を推進中だ。
モノづくり強化のためのスマートファクトリー化
川崎重工では、現状の課題としてコスト削減と差別化と競争力の向上、労働力不足などを挙げる。これに対して「自動化のさらなる推進、付加価値の向上、開発およびモノづくりプロセスにおけるモデルベース開発、生産プロセス革新などに取り組む。人材に関しては熟練技術者に頼っていたところを、設備や技術をベースにしたモノづくりの方向に代替していく。さらにこれらを分析し最適化するように進化させる」と田村氏は、スマートファクトリー化への取り組みについて語る。
さらに、スマートファクトリー化を加速するために、自動化機器の設計と加工能力の引き上げ、強みやスキルを統合して知能化する取り組みを進める方針だ。ただ「ゴール(目的)を全自動化工場とすると、それには、自動化設備をただ並べるだけになってしまう。それでは、スマートファクトリーの実現とはならない。そのために統合、知能化にしっかり取り組む必要がある。今は、生産準備、生産実行を統合して業務のプロセスとして確立する取り組みを進めている」と田村氏は語る。
これらの課題解決のために現在は、リアルタイムマネジメントや設備のネットワーク化、トレーサビリティー強化、作業指示の電子化、個体識別への取り組みなどを順次進めているところだとしている。
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