配車サービスで年間走行距離が5倍に、トヨタは作業時間半減のメンテナンスで対応:モビリティサービス
トヨタ自動車は2018年12月18日、東南アジアの配車サービス大手であるGrab(グラブ)向けに車両のトータルケアサービスを提供すると発表した。通信型ドライブレコーダーを活用して収集した車両の情報をトヨタ自動車とGrabで共有し、フリート管理や自動車保険、事故発生時の対応、メンテナンスまで一貫して行う。
トヨタ自動車は2018年12月18日、東南アジアの配車サービス大手であるGrab(グラブ)向けに車両のトータルケアサービスを提供すると発表した。通信型ドライブレコーダーを活用して収集した車両の情報をトヨタ自動車とGrabで共有し、フリート管理や自動車保険、事故発生時の対応、メンテナンスまで一貫して行う。
まずはGrabが保有する車両1500台に同サービスを提供し、段階的に東南アジア全域に拡大する。Grabは、東南アジア地域内の同社保有車両に占めるトヨタ車の比率を2020年に25%増やす計画だ。さらに、ビジネスの効率化に向けてトヨタ生産方式をさまざまなオペレーションに適用していく。
トータルケアサービスでは、車両に搭載した通信型ドライブレコーダー「TransLog(トランスログ)」を通じて走行データをトヨタ自動車の「モビリティサービスプラットフォーム」に収集する。Grab、現地のトヨタ販売店であるBorneo Motors、トヨタ自動車が走行データを相互に活用することで、配車サービスの安全性や安心感を高める。
配車サービス向けの車両は、個人所有のクルマと比較して年間走行距離が5倍に増えることから、メンテナンスが頻繁に必要になる。そのため、トヨタ販売店では、Grabが保有する車両向けに効率を高めたメンテナンスサービスを提供する。
販売店はモビリティサービスプラットフォームを通じて、各車両の走行距離や、システムの異常の有無などを来店前から把握することができる。整備工場には部品の自動搬送や、作業内容を確認するための音声認識機能など、省力化技術を導入。ドライバーが販売店にクルマを預けてから帰るまでの時間を、従来の70分間から30分間まで短縮する。配車サービス用車両のダウンタイムを抑えるとともに、メンテナンスコストの低減につなげる。
Grabは走行データを活用してドライバーのサポートやアドバイスを行う。あいおいニッセイ同和損害保険の現地子会社が走行データ連動型自動車保険を提供する。Grabは安全運転の推進と保険料低減が図れる。万が一、Grabの車両で事故が発生した場合は、収集したトランスログの映像やセンサーのデータから事故の状況を把握できるようにする。
トヨタ自動車は2017年8月からGrabと協業をスタートし、2018年6月にはGrabに10億ドル(約1100億円)を出資すると発表。当初からGrab向けのコネクテッドサービスの共同開発を目標に掲げていた。Grabは8カ国235都市で、配車サービスや食べ物のデリバリー、宅配サービスなどを提供しており、2018年3月にはUber(ウーバー)の東南アジア事業を買収して事業体制を強化した。サービスには四輪車だけでなく二輪車も使われており、ホンダやヤマハ発動機もGrabと協業している。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- その改善はトヨタ生産方式の「本質」を外している
自動車業界のみならず、今やさまざまな製造業で活用されている「トヨタ生産方式」。しかし、今伝えられているトヨタ生産方式の多くは本質を誤解したものーーと指摘するのがエフ・ピー・エム研究所の鈴村尚久氏だ。大野耐一氏とともにトヨタ生産方式を作り上げた父・鈴村喜久男氏の長男であり、自身も長年にわたってトヨタ自動車で生産改善活動に従事。その後100社以上の企業の改善活動を支援してきた鈴村氏。本「道場」ではトヨタ流改革の本質を知る同氏が、日本の製造業が抱えるさまざまな「悩み」と「課題」を斬る。 - 中国配車サービス大手が自動車メーカー12社と協業、ルノー日産三菱も参加
ルノー・日産自動車・三菱自動車アライアンスは、電気自動車(EV)を使った中国でのカーシェアリングについて、滴滴出行(ディディチューシン)と協業する。 - トヨタが東南アジアの配車サービス大手Grabに1100億円出資、役員も派遣
トヨタ自動車は、東南アジアの配車サービス大手Grabに10憶ドル(約1100憶円)を出資する。また、意思決定を迅速化するため、トヨタ自動車からGrabに取締役と執行役員を派遣する。2017年8月からスタートした業務提携を深化させるとともに、協業の成果を東南アジア全域に展開していく。 - モビリティサービスが自動車市場に与えるインパクトはプラスかマイナスか
世界各国で普及が進むモビリティサービスだが、自動車市場にどのような影響を与えるのだろうか。中国と米国、欧州、そしてインドでどのような変化が起こるかを予想する。 - トヨタはモビリティサービスでどう稼ぐか、何を競争力にするか
人々の移動を助ける会社「モビリティカンパニー」を目指すトヨタ自動車。「モビリティサービス・プラットフォーム」の整備や、車載通信機の本格的な普及など、モビリティサービスの展開に向けた施策の狙いを聞いた。 - トヨタとパーク24が新サービスの開発を視野に業務提携、通信型ドラレコでデータ収集
トヨタ自動車は、パーク24とカーシェアリングサービスで業務提携を開始した。通信型ドライブレコーダー「トランスログ」やカーシェアリング機器を搭載した「C-HR」を用いて、2018年6月〜2019年3月末にサービスの試験運用を行う。 - EV大反転、敵はとり得る3つの方針の中から4番目を選んでくる
フランスや英国政府による2040年までにガソリン車・ディーゼル車廃止の発表に端を発したEV大反転の話題は、政府と既存の大手自動車メーカーの動向に話題が集中している。しかし、これまで想定していなかったプレイヤーが参加するなど、もっと別のところからも動きが出てくるのではないだろうか。まさに異業種格闘技の様相を示してきている。