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その改善はトヨタ生産方式の「本質」を外している鈴村道場(1)(1/6 ページ)

自動車業界のみならず、今やさまざまな製造業で活用されている「トヨタ生産方式」。しかし、今伝えられているトヨタ生産方式の多くは本質を誤解したものーーと指摘するのがエフ・ピー・エム研究所の鈴村尚久氏だ。大野耐一氏とともにトヨタ生産方式を作り上げた父・鈴村喜久男氏の長男であり、自身も長年にわたってトヨタ自動車で生産改善活動に従事。その後100社以上の企業の改善活動を支援してきた鈴村氏。本「道場」ではトヨタ流改革の本質を知る同氏が、日本の製造業が抱えるさまざまな「悩み」と「課題」を斬る。

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 私は最近の世の中についておかしいと思うことがたくさんあります。

  • 人気の新車が数カ月待ち?どうして?
  • シャープがヘルシオなどの魅力ある商品開発力があるのに、経営難なのはなぜ?
  • 注文増になると何億もの設備投資をしたがる、経営者ばかり。もっとやれることがあるのに
  • 倉庫に物が寝ているのに「物流」センター?

 どう管理しているかと聞くと「需要予測→見込生産」「海外生産」「まとめ造り」などを採用してコストダウンに努力していますとの回答ばかり。

 今の世の中、もう少し視点を変えるともっと良くなることばかりなのに、それに気付かない経営者が増えているのではないかとの危機感を覚えています。一方経営者や幹部の側に立つと会社のために一生懸命にやっている(つもり)なのだが、残念ながらポイントがズレていたり、パラダイムが狂っているためにやってはいけないことばかり次々とやっていたりするのではないかと思います。

 本連載ではトヨタ生産方式の本質を捉えて、多業種の経営改善を通じて得た私の経験と学んだことを、皆さまの経営に生かして頂けたらと思います。まず第1回は私の略歴と、製造業の現状をどう捉えているかについてお話しします。

私の略歴

 私の父親である鈴村喜久男は、トヨタ生産方式の生みの親である大野耐一氏の傍らで現場での指導を徹底して貫きトヨタ生産方式を定着させた第1人者です。私もトヨタ自動車に入社して父の背中を見ながらトヨタ生産方式が発展していく過程を見てきました。


鈴村尚久(すずむら・なおひさ) エフ・ピー・エム研究所 所長。1976年3月京都大学法学部卒業。1976年4月トヨタ自動車入社。退社後1999年8月にエフ・ピー・エム研究所を設立。トヨタ生産方式のコンサルタントとして、はくばく、ピップフジモト、パナソニック、マルヨシセンターなど多くの企業の生産改善を手掛ける。著書に『トヨタ生産方式の逆襲』(文春新書)。父・鈴村喜久男氏(故人)は「トヨタ生産方式」の生みの親である大野耐一氏の側近として知られる

 1976年に入社し、経理部に4年、購買部に約12年、1991年から生産調査部に3年間所属していました。その中でトヨタ生産方式の改善活動の実態を見て違和感を覚え独自のアイデアも取入れ改善活動を行いました。約21年在籍したトヨタを1997年に退社した後にエフ・ピー・エム研究所を設立しました。

 エフ・ピー・エム研究所のエフ・ピー・エムは「Flexible Production Management」の略です。コストダウンのためだけでなく、会社の構造改革をして儲かるようにし、ステークホルダー(顧客、株主、社員)の皆がハッピーになるためにトヨタ生産方式を活用するという意味が込められております。

 言いかえると「楽(らく)をして、いい仕事を、確実に、素早くこなす」ことが目的です

 エフ・ピー・エム研究所を設立後はトヨタ生産方式の本質を捉え、自分なりのアイデアも取り入れて多種多様な業種の経営改善の指導をしてきました。業種は家電、機械、食品、健康器具など多岐にわたります。私の行う改善指導は製造部門だけでなく、販売、サービス、購買、物流部門など、企業の全部署を対象とします。今までの17年間で100社以上の改善指導を行ってきました。

 また皆さまからよく鈴村さんは1業種1社の指導しかしないのですねと言われます。これについてはYesです。理由は2つあります。

 1.同じ業種ばかりでは発見が少なく、いずれ努力しなくなりコンサルティングスキルが向上しない。そして世の中には業種がすごくあるので、どれだけ適用できるか確認したい探求心があるからです。中には同じ業種で複数担当しているケースもありますが、クライアントに了解の上、実施しています。

 2.本当の悩みや問題点を知りたいため、その会社の根源まで踏み込むことにより、真の原因を見つけて解決していきます。そのため、クライアントは同業他社に企業秘密が漏れるのは嫌がりますので、原則1業種1社と決めています。

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