ガラスが舞い踊りIoT化する、AGCがオープンイノベーションを強化:イノベーションのレシピ(2/2 ページ)
AGCは、東京都内で会見を開き、同社のオープンイノベーション戦略と協創プロジェクト「SILICA」について説明した。
「ANIMATED」と「GLASS INNNOVATION CHALLENGE」
SILICAはSession of Innovative Laboratory Ideas and Collaborative Actsの略で、ガラス原料であるSiO2(シリカ)に掛けている。現在の取り組みとしては、素材・技術の新しい「魅せ方」を提案する「ANIMATED」と、ガラスの新しい「使い方」を提案する「GLASS INNNOVATION CHALLENGE」の2つがある。いずれも「未来のパートナーとつながるための種まき」という位置付けだ。
会見の登壇者。後方左から、AGCの續木南氏、平井良典氏、Aの山田歩氏。前方に並ぶのはANIMATEDに協力したデザイナー3氏で、左から、建築家の古市淑乃氏、同じく建築家の大野友資氏、プロダクトデザイナーの秋山慶太氏
ANIMATEDでは、化学強化、コーティング、挟込み成形という3つの硝子技術を題材に、ロフトワークが選定した3人のクリエイターとともに、新たな可能性を探り、それを体現するプロダクトを製作した。
例えば、化学強化であれば、厚さ0.1mmで曲げても割れない「舞うガラス」や、揺れるガラスのバネ「踊るガラス」などである。「B2Bで関わることのできなかった、デザイナーや一般ユーザーなどとの協創を通じて、より幅広い顧客に価値を提供していく」(AGC 商品開発研究所の續木南氏)という。
一方、GLASS INNNOVATION CHALLENGEは、A(エイス)が提供するオープンイノベーションプラットフォーム「Wemake」により実施したものだ。A 代表取締役の山田歩氏は「さまざまなオープンイノベーションがある中で、Wemakeの特徴は、具体的な事業計画やモックアップレベルまで仕上げたアイデアが得られること、そして何より異業種、異分野の発想からニーズを発見し、生活者、使い勝手視点のソリューションを開発できるところにある」と説明する。
ガラス素材を使う必然性が中核となったGLASS INNNOVATION CHALLENGEでは、約200件の提案があり、そこから7件を採択した。公募から採択までの期間は約4カ月となる。
最優秀賞となったのが「IoTガラスブロック」だ。ガラスに好みの機能を持たせ、その機能を自由に組み替えたいというアイデアから生まれたもので、調光と面発光の機能を持つガラスにより、オフィスや商業スペースで空間の用途に合わせて透明度や照明を調整できるインタラクティブなブロック型のガラスウォールになる。
なお、これらのANIMATEDとGLASS INNNOVATION CHALLENGEの開発成果は、2019年3月1日まで「AGC Collaboration Exhibition 2018」として東京・京橋の「AGC Studio」で公開している(入場無料)。
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