乳酸菌K15が感染抵抗性を向上、発熱日数も少なく:医療技術ニュース
キッコーマンは、千葉大学らとの共同研究により、乳酸菌K15が持つ感染予防や感染抵抗性の増強効果について確認した。
キッコーマンは2018年11月9日、加熱乳酸菌「Pediococcus acidilactici K15(乳酸菌K15)」が持つ、感染予防や感染抵抗性の増強効果について確認したと発表した。同社と千葉大学、産業技術総合研究所、徳島大学疾患酵素学研究センターとの共同研究による成果だ。
同研究では、インフルエンザの流行期を含む4カ月間(2016年11月〜2017年2月)に、3〜6歳の健康な幼稚園児172人を対象に、乳酸菌K15またはプラセボ(デキストリン)を経口投与するプラセボ対照二重盲検ランダム化比較試験を実施した。また、園児の健康観察日誌から体温や感冒症状、欠席日数、試験食品および乳酸菌食品の摂取歴(制限なし)といった情報を収集した。
試験の開始前後で唾液を採取できた乳酸菌K15摂取群とプラセボ群、各81例を解析したところ、乳酸菌K15群は+3.20mg/dLと、プラセボ群の−12.48mg/dLに比べ、唾液中のIgA濃度が有意に高く変化していた。IgAは、腸管や口腔、鼻腔などの粘膜に分泌される抗体で、病原菌やウイルスを排除するために大きな役割を果たしている。つまり、唾液中のIgA濃度は感染抵抗性の指標となる。
発熱日数には両群で有意な差はなかったが、他の乳酸菌食品の摂取が週1回以下という症例のみを解析したところ、K15摂取群は1.69日、プラセボ群は3.17日と、K15摂取群で発熱日数が有意に短縮されていた。
今後、感染予防や感染抵抗性の増強に乳酸菌K15が活用されることが期待される。同研究グループは、乳酸菌K15の効果をさらに検証し、乳酸菌K15を含む食品の開発を進めていく。
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