感染症の早期発見につながる抗体を検出する光る紙チップを開発:医療機器ニュース
慶應義塾大学は、大きさ1cm程度の感染症診断のための簡易検査用紙チップを開発した。検査手順は紙チップに血液を一滴垂らしてデジタルカメラで撮影するのみで、20分ほどで青〜緑色の発光により結果が判明する。
慶應義塾大学は2018年10月2日、感染症診断のための簡易検査チップを開発したと発表した。紙でできた検査チップの大きさは約1cmで、紙チップに血液を一滴垂らしてデジタルカメラで撮影するのみ。20分ほどで青〜緑色の発光により検査結果が判明する。本研究は、同大学理工学部教授 Citter Daniel氏がオランダのEindhoven工科大学と共同で行ったものだ。
紙チップは多層構造になっており、複数のエリアにパターニング、またはさまざまな試薬で前処理され、検査に必要な機能および試薬が集約されている。紙チップの発光は生物発光センサータンパク質によるもので、光を放つ深海生物が持つものと同じタイプの酵素を使用している。
サンプル中にターゲットの抗体が存在しなければ、青色の発光が物理的プロセスを経て緑色の発光へと変換される。一方、抗体存在下ではセンサータンパク質に抗体が結合し、発光色変換プロセスが遮断されて青色の発光が確認される。発光が緑色であるほどサンプル中に抗体が少なく、発光が青色であるほど抗体が多いことを示す仕組みだ。
研究グループはプロトタイプとして、抗HIV、抗インフルエンザ、抗デング熱の3種の抗体を同時に検出することに成功。数年のうちに商品化を目指すという。
開発された紙チップにより、病院での検査にかかる費用・時間の削減が見込まれる。また、途上国の熱帯症などにおいても、簡易検査法としての寄与が期待される。
*** 一部省略されたコンテンツがあります。PC版でご覧ください。 ***
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- ヘルペスが繰り返し発症する理由は、「宿主の免疫から逃げる分子メカニズム」
東京大学は、単純ヘルペスウイルスの新しい免疫回避機構を発見し、それをつかさどるウイルスタンパク質として「VP22」を同定した。解明された分子メカニズムを標的としたHSV感染症の新しい治療法の開発につながる。 - 写真現像の銀塩増幅技術を応用した感染症検査装置
富士フイルムは、インフルエンザやマイコプラズマ肺炎などの感染症を引き起こすウイルスや細菌の有無を自動判定する感染症検査装置「富士ドライケム IMMUNO AG2」を発売した。 - 熱帯感染症診断に適した遺伝子検査システムの共同研究を開始
長崎大学は、熱帯感染症や新興・再興感染症を対象にした新たな遺伝子検査システムの開発について、東芝メディカルシステムズと共同研究契約を締結した。2016年8月から2年間、共同研究に取り組む。 - ジカウイルスの輸入リスクと国内伝播リスクを推定する統計モデル
北海道大学は、各国のジカ熱の輸入リスクと国内伝播のリスクを推定する新しい統計モデルを開発し、推定結果を発表した。日本で2016年中にジカ熱の国内伝播を認めるリスクは16.6%と推定された。 - 屋外でも細菌やウイルスを検出可能な電流計測センサー
名古屋大学は、持ち運び可能な微生物センサーを開発した。ブリッジ回路を用いたバックグラウンド電流抑制技術を使用しており、屋外での微生物計測を可能にする。