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砂型3Dプリンタを乾式砂でスピードアップ、電子ビーム金属プリンタはスモーク抑制の研究も金属3Dプリンタ(2/2 ページ)

技術研究組合次世代3D積層造形技術総合開発機構(TRAFAM)は、Additive Manufacturing(付加製造)の国家プロジェクトを新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託研究として進めている。

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メルトプールはマランゴニのみでもシミュレーション可能


TRAFAMの電子ビーム方式金属プリンタのプロジェクトリーダー、東北大学 金属材料研究所 加工プロセス工学研究部門 教授の千葉晶彦氏

 TRAFAMの電子ビーム方式金属プリンタのプロジェクトリーダーで東北大学 金属材料研究所 加工プロセス工学研究部門 教授の千葉晶彦氏は、メルトプールのシミュレーションやスモーク回避、機械学習を用いた最適レシピなどの研究を発表した。なお電子ビーム式の金属3Dプリンタについては、多田電機と日本電子が製品化に向けて取り組んでいる。

 メルトプールのシミュレーションについては、マランゴニ効果を考慮すれば、十分に正確な予測ができるであろうことが分かったという。メルトプールに関係する力については、3つが考えられる。1つはメルトプールから発生する蒸気と周囲のガスがぶつかり合ってメルトプールのへこみを発生させるVRP(蒸気反動圧)である。2つ目は、メルトプール表面の温度が不均一になることにより発生する対流(マランゴニ効果)である。3つ目が電子ビームに特有の現象で、粒子である電子と蒸発した原子との相互作用によるECP(電子衝突圧)である。

 これらを考慮してシミュレーションと実験を行った結果、電子ビーム方式ではECPおよびVRPについては考慮しなくても、シミュレーション結果にほぼ影響がないことが分かった。なおレーザー方式ではVRPも考慮する必要がある。「電子ビームではマランゴニ効果をきちんと評価しさえすれば、十分にメルトプールのシミュレーションができるだろう。なお計算時間の短縮は課題になる」(千葉氏)。


図8:メルトプールの実験とシミュレーションの比較

粉末の抵抗を下げてスモーク防止

 電子ビームを照射した瞬間に粉末が煙のように発散してしまうスモーク現象については、「電子ビーム積層造形の要素研究として非常に重要だと考えて取り組んできた」(千葉氏)という。

 スモークはビームを照射した際に粉末が帯電して、反発し合い飛んでしまう現象である。瞬間的な現象ではあるものの、高速度カメラによる観察などから、すぐ帯電して吹き飛ぶのではなく、帯電と放電を繰り返しながら、徐々にチャージがたまってあるとき粉末が飛ぶことが分かったという。金属なら帯電しないはずだが、粉末の表面には酸化膜ができているためキャパシタの役割を果たして帯電に至る。そのためパウダーベッドの電気抵抗をなるべく小さくするのが具体的な対処法になる。通常は酸化物の抵抗を下げるために予熱が行われる。

 千葉氏らは、粉末表面にニッケルめっきを施すことでスモークを回避できるか調べた。その結果、表面のキャパシタの効果がなくなり、通常は1050度まで加熱しなければスモークを回避できなかったところ、めっき粉末では室温でもスモークの発生は見られなかった。このことから、めっき以外にも何らかの容易な処理を行うことができればスモークを回避できるだろうという。

 造形物のひずみ対策に関しては、「500か600度程度の加熱で効果があるため、TRAFAMの成果から500度程度の予熱でスモークを起こさないような装置が販売されると予告したい」(千葉氏)と語った。

機械学習で表面の状態からレシピ最適化

 最適な造形レシピを求めるための機械学習の取り組みについても紹介した。例えば縦軸が出力値、横軸がスキャン速度のプロセスマップを考える場合、標準資料を作って表面の滑らかさやうねり、欠陥、内部の観察や密度測定などを行い、最適なパラメータを求める。ただし形状が変わると条件も変化してしまう。

 そこで機械学習を用いる。サポートベクトルマシン方式を用いて、分離境界から離れるほど欠陥がないという仮定の下にレシピ最適化を行ったところ、非常に効果があることが分かった。この方法では内部を見たりする必要がなく、表面の観察だけでおおよその最適化ができるという。

 千葉氏は組織制御の研究についても紹介した。温度勾配と凝固速度の違いによって、金属の状態は単結晶から多結晶へと移り変わる。そのため温度勾配と凝固速度をコントロールすれば組織制御が可能だと考えられるが、実際にはそう簡単ではない。メルトプール内の流速やメルトプール形状が重要なファクターになってくるという。


図9:凝固マップ

 「積層造形は実は鋳造学、あるいは溶接の範ちゅうになる。ただし溶接とはスキャン速度が大きく異なるため、新しい分野になるだろう。シミュレーション技術で実験的には明らかにできないローカルな現象のパラメータを補い、その実証のためモニタリング技術を確立していけば、いずれ積層造形はデジタルマニュファクチャリングにおいて非常に重要なツールになるだろう」(千葉氏)。

(終わり)

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