人手不足はロボットで解決、人とともに働き技能伝承も手伝う:協働ロボット(2/2 ページ)
食の安全安心を実現する製品や技術、サービスの専門展「フードセーフティジャパン・フードファクトリー」(2018年9月26〜28日、東京ビッグサイト)において、川崎重工業精密機械・ロボットカンパニー ロボットビジネスセンター 営業企画部 部長の真田知典氏が講演した。
人手不足に対応する協働ロボットの価値
現在、就労人口は減少の一途をたどっている。今後、年間64万人が年々減少する見込みとされており、こうした状況の中で、真田氏は「技術の伝承と労働力不足の問題を解決するために産業用ロボットが期待されている」と力を込める。
労働人口減少に対応するには「人と共存、適用範囲を拡大できるロボットが価値を発揮する。また、熟練者の引退に伴う技能の消滅に対しては、技能継承できる新ロボット提案が重要となる」(真田氏)とする。
この提案の背景には国内の法律(労働安全衛生法)も変化がある。それまでロボットは安全柵などを用いて人と分離して使用と明記されていたが、一定の条件下で、人とロボットの共存・協調作業が可能になるよう「規制の緩和」が行われた。
川崎重工業では、この規制緩和の半年後に、人と共存を可能にする「双腕スカラロボットduAro」を発売した。共存ロボットに求められることは生産期間の短い製品でもロボット適用が可能で、人と簡単に置き換えられるロボットというものだ。同社のduAroの開発コンセプトは「Essy to Use」であり、システムの立ち上げが簡単、人の共存作業が可能、低トータルコストという特徴がある。
特にduAroには、人のように2本の腕があるため、既存の機器や設備を最大限に活用することで、設備投資が抑えられることが最大のメリットとなる。現在、duAroはネジ締めや組み立て、部品挿入組立から箱詰め出荷、素材検査や精肉トレー投入、おにぎり詰込積み込みなど、導入場所は、製造現場から、店舗のバックヤードまで広がりをみせている。
こうした動きに対応し、同社ではロボット導入の促進を目指し2年前から、ロボット派遣なども実施している。これは繁忙期(生産ピーク)などの時期にレンタルで短期間でもロボットを試すことができるもので、レンタル終了後に買い取りも可能だ。月額のレンタル料金は、人材派遣業における労働者の平均月収18万6000円よりも4000円安い18万2000円に設定している。
ロボット化が難しい領域を手伝うロボット技術
一方、同社ではロボット化が、難しいとされている分野への対応も進めていく姿勢を示す。
ロボット化が困難な分野は、人の感覚を使って作業をする工程(組立、研磨など)、部品のばらつきが大きい(鋳物、プレス品など)分野などである。これらをロボット化していくためには、センサーを多用しなければ実現できなかったり、ラインや工場ごと改造しなければならなかったり、教示など準備作業に時間がかかりすぎたりする。無理に適用しようとすると、工程や作業(例えば非量産品分野、受注生産品や個別部品が微妙に異なるもの、中小企業など頻繁に対象品種が変わる部品などの用途)などのコストや時間的に見合わなくなるのである。
川崎重工業では、人の技術をロボットに伝承できる機能を搭載した新ロボットシステム「Successor」(継承者という意味)を開発。こうしたロボット化が難しい分野への新たなソリューションを提供する。Successorの特徴は人の作業を機械に覚え込ませ、それを再現できるというものである。
自動運転と遠隔操作の両方を自由に組み合わせられるハイブリッド機能、1人の作業者で複数台のロボットをカバーできるマルチコントロール機能、人の操作を覚えて自動運転に変換できるAI機能、熟練者が記憶させた操作を新人が学ぶことができるトレーニング機能の6つの機能を搭載しており、技術伝承や自動制御などに活用できるとしている。
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