「人の幸福から離れて、生き残る会社はない」パナソニック津賀社長:製造業がサービス業となる日(2/2 ページ)
パナソニックは2018年10月30日、同社の100周年を記念して行う初めての全社ユーザーイベント「CROSS-VALUE INNOVATION FORUM 2018」(2018年10月30日〜11月2日)を開催。基調講演として同社の代表取締役社長 津賀一宏氏が登壇し「パナソニックは家電の会社から、暮らしアップデート業の会社になる」と宣言した。
暮らしアップデートを実現するのに必要な2つのもの
津賀氏はこの「暮らしアップデート業」を実現する上で、重要な点が2つあると強調する。1つは「共創」である。ユーザーの幸福や価値を基準に考えた場合、パナソニック1社で実現できる範囲は限定的なものになる。本当に人の暮らし、人の幸福に寄り添った時、さまざまな製品や技術、サービスなどを組み合わせていくことが必要になる。
この例としては中国において、建築設計ソフトウェア会社大手のGlodon(グロードン)とバッテリーメーカーのLinkdata Technologies(リンクデータ)との協業により、建築業界向けのソリューション事業を展開した例がある。建築現場作業員向け集合住宅の開発や販売、レンタル事業への参入を行う他、建物利用者の健康や快適性を考慮した高機能空間設計ソフトウェアの開発などにも取り組む。
津賀氏は「3社の協業により快適に過ごせるプレハブハウスなどの開発を実現。発注から2カ月で住めるようになるなど住宅の新たな形を実現できる。中東の高度成長エリアなどで実証を進めており、それ以外の展開も検討している」と述べる。
さらにもう1つのポイントとしては「とにかく始めていることが重要だ」(津賀氏)という点である。この例として挙げたのも、中国企業との協業である。2018年10月25日に発表した火鍋チェーン海底撈(ハイディーラオインターナショナル)との「自動おかず倉庫」での協業である※)。
※)関連記事:パナソニックが中国最大の火鍋チェーンの厨房を自動化も「まだ序章にすぎない」
これは、オーダー端末からの注文に合わせて、食材が盛り付けられた皿を選んでトレーに並べる作業をロボットが自動で行うものである。「ロボット化を促進したスマートレストラン構想を進めていく。まだ1号店だけだが、今後はさらに広げていく。自動化とそれによるデータ化ができれば、顧客との新たな関係なども構築できる。海底撈でも登録すれば、スープの味を好みの味として管理することが可能となる。新たな価値を創出できる」と津賀氏は価値について強調する。
この「とにかく始めてみる」という点について津賀氏は「メーカーとしては『あえて未完成品を提供する』ことが重要だ。以前はガチガチにメーカー側で固めた完成品を提供してきたが、それでは多様性には対応できない。完成品に仕上げるのは顧客だという意識で、余白を残す必要がある」と強調する。
この「あえての未完成品」を象徴するのが「HomeX」である※)。「HomeX」は、暮らしの統合プラットフォームで、暮らしを総合的に捉えて、情報を収集し最適な形でさまざまな機器や住宅などと連携し、情報発信やサービスを提供する仕組みである。「暮らしの統合プラットフォーム」と位置付けている。
※)関連記事:“暮らしのiOS”か? パナソニックの新たな暮らし基盤「HomeX」デビュー
「家で暮らす人々が常に何を求めているかに柔軟にフィットするためには、暮らしに寄り添う情報基盤が必要になる。HomeXはその情報基盤の役割を担う。家電は使っている人に合わせて進化する時代になる。サービスは常にその人の変化に合わせて更新され続けなければならない。だからあえての未完成品である必要がある。一方で、その完成品に導くためには顧客に常時寄り添い最適なタイミングで新たな体験を提供できる仕組みが必要となる。その仕組みとしてHomeXを活用する」と津賀氏は述べている。
共創のカギは「人々の幸せ」
さらに津賀氏は、これらの共創を実現するためのキーワードとして「人々の幸せ」を挙げる。
「これらのことを成し遂げていくにはパナソニックだけでは足りない。人の幸福から離れて生き残れる企業は存在しない。しかし、人々の幸福を考えた場合、企業はともに幸福を作り出す同志ともいえる。100周年を迎える中であらためて、一緒に暮らしや社会をより良くしていきたい」と決意を述べていた。
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