物流崩壊から2年、ユニクロが全自動倉庫に取り組む理由(後編):サプライチェーン改革(3/3 ページ)
ユニクロなどを展開するファーストリテイリングとダイフクは2018年10月9日、戦略的グローバルパートナーシップを結んだことを発表した。全自動倉庫を含む物流の抜本的効率化に共同で取り組む。後編では全自動倉庫の全容について紹介する。
自動封函機
その後、自動で組み立てられた配送箱にQPSでピックアップした製品を収め、自動封函機によって封函される。特徴は、内容物の量を計測し、その量に応じてダンボールの折り込み線の位置を変えて、圧縮してちょうどよいサイズの箱とするために「少ない内容量なのに大きすぎる箱」という状況を防ぐことができるという点である。これにより、1度の配送車での配送量を増やす効果なども生まれているという。
方面別仕分けソーター
封函された箱は、バーコードによる認証により、方面別仕分けソーターで仕向地に応じて自動で仕分けされる。配送パートナーがこれらの仕分けされた箱を順番に受け取り、それを仕向地に合わせて配送する。この工程も従来は人手で、配送パートナーに大きな負担をかけていたが、それを大幅に低減できたとする。
自動オリコンたたみ機
使用後のパレットをたたむ作業も自動化する。「従来はパレットをたたむのにも多くの人手がかかっており、生産的でないと感じていた。それを改善できた」(神保氏)としている。
リードタイムは64分の1に
これらの自動化の効果により、入庫生産性は80倍、出庫生産性は19倍に上がったとし、省人化率も90%に達したという。リードタイムについても「従来はオーダーを受けてから出荷するまでに8〜16時間かかっていたが、今は早ければ15分、遅くても1時間以内には出荷できている」(神保氏)とする。
今後、ファーストリテイリングではこれらの自動倉庫を全世界に広げていく方針である。「日本だけでも12の倉庫があり、これらの自動化を進めていく。また既に海外でも取り組みを開始しており、中国、タイ、オーストラリア、米国の東海岸と西海岸では既に着手している」と神保氏は述べている。
さらに、現在唯一人手が残されているピックアップの領域についても「既に自動化に向けた取り組みは進めており、1年以内に完全自動化を実現できる。多数のロボットベンチャーなどとも話を進めているところだ」(神保氏)としており、現在の自動倉庫の姿もさらに進化させる姿勢を示している。
神保氏は「他のEコマース企業は多種多様な製品に対応するために自動化には限界があるというのが定説となっていた。しかし、ファーストリテイリングはアパレルの自社製品だけに特化している。服の専門家だからこそできることがある。今までに全く無い新しい自動倉庫の姿を作り出していきたい」と今後の抱負について述べている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 物流崩壊から2年、ユニクロが全自動倉庫に取り組む理由(前編)
ユニクロなどを展開するファーストリテイリングとダイフクは2018年10月9日、戦略的グローバルパートナーシップを結んだことを発表した。全自動倉庫を含む物流の抜本的効率化に共同で取り組む。本稿では前後編に分け、ファーストリテイリンググループの物流改革の取り組みと全自動倉庫の全容について紹介する。 - ユニクロが7カ国146拠点の主要取引工場を公開、生産の透明性確保へ
ユニクロを運営するファーストリテイリンググループは、従来非公開としてきた主要取引先工場を公開し、サプライチェーンの透明性を示す方針を明らかにした。 - 越える業種の壁、トライアルが目指す流通革命とパナソニックが目指す工場外自動化
人手不足に悩む流通業界だが、改革を実現するには何が必要だろうか。トライアルカンパニーは、ITとオートメーションの活用に活路を求めた。トライアルカンパニーがパナソニックと組んで取り組む、流通改革の現場を追う。 - アパレルで進むマスカスタマイゼーション、島精機製作所が起こす革新
島精機製作所は、「リテールテック2017」のインテルブース内に出展し、「シマトロニックデザインシステム」によるマスカスタマイゼーションの実現について紹介した。 - RFIDはアパレル業界の救いの手となるか?
経済産業省委託事業「IT投資効率性向上のための共通基盤開発プロジェクト」の繊維分野における電子タグ実証実験の概要とデモの模様を紹介する。 - それでも製造業にとって“スマート工場化”が避けては通れない理由
製造業の産業構造を大きく変えるといわれている「第4次産業革命」。本連載では、第4次産業革命で起きていることや、必要となることについて、話題になったトピックなどに応じて解説していきます。第25回となる今回は「そもそもスマート工場化って必要なの?」という点について考察してみたいと思います。 - スマートファクトリーはエッジリッチが鮮明化、カギは「意味あるデータ」
2017年はスマートファクトリー化への取り組みが大きく加速し、実導入レベルでの動きが大きく広がった1年となった。現実的な運用と成果を考えた際にあらためて注目されたのが「エッジリッチ」「エッジヘビー」の重要性である。2018年はAIを含めたエッジ領域の強化がさらに進む見込みだ。