物流崩壊から2年、ユニクロが全自動倉庫に取り組む理由(後編):サプライチェーン改革(2/3 ページ)
ユニクロなどを展開するファーストリテイリングとダイフクは2018年10月9日、戦略的グローバルパートナーシップを結んだことを発表した。全自動倉庫を含む物流の抜本的効率化に共同で取り組む。後編では全自動倉庫の全容について紹介する。
これがユニクロの全自動倉庫の全容だ!
まず、「UNIQLO CITY TOKYO」Eコマース倉庫に運び込まれる前段階の流れを紹介する。ファーストリテイリングのアパレル製品は中国などの海外の生産工場で生産されるものが多く、生産国から国内に入荷される※)。国内に入荷すると製品をパレットに搭載するための拠点に運び込む。その後パレットに搭載された製品をEコマース向けの倉庫である「UNIQLO CITY TOKYO」内倉庫に運ぶという流れである。
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同倉庫内に運び込まれた製品は、まず自動入庫荷下ろし機により、荷降ろしされ、RFIDにより自動検品された後、保管用もしくは出庫用の倉庫にパレットで収められる。受注が入れば、その倉庫からQPS(Quick Pick Station)にパレットが運ばれ、人が個々の出荷用ダンボールにピックアップし、自動封函機や方面別仕分けソーターなどを経て出荷される。この内人手が必要なのはQPSのところだけだ。
自動入庫荷降ろし機
さらに、詳しく「UNIQLO CITY TOKYO」Eコマース倉庫の全自動化の詳細を見ていこう。パレットで入庫された製品はロボットアームによる自動入庫荷降ろし機で4つまとめてつかんで荷降ろしを行う。従来は配送会社などによる荷降ろし作業などが行われており、これらの負荷を低減できるという。
RFID自動検品機
自動入庫された製品はコンベヤーでそのまま3階まで運ばれ、RFIDによる自動検品を行う。1回の検品で完全に認識できるわけではないが、複数項目での誤差などで認識ミスが生じたと判断した場合は自動で認識できるまで検品作業を繰り返す。これにより、RFID自動検品の精度は現状では100%となっており、ミスがない状況を実現できているという。
自動保管倉庫と自動出庫倉庫
「UNIQLO CITY TOKYO」Eコマース倉庫では、倉庫機能として標準製品の保管を行う「自動保管倉庫」と、売れ筋製品を収める「自動出庫倉庫」の2種類を用意している。「自動出庫倉庫」は具体的には、ウルトラライトダウンなどの売れ筋製品で回転率の高い製品を扱い、出庫のスピードを重視した設計となっている。一方で「自動保管倉庫」は収納性を重視しているということが違いである。
従来はこの倉庫への収納も、品番ごとに人手で行っていた。そのため、人の届く高さまでしか棚を並べることができなかったが、完全自動化を実現したことで、天井一杯まで棚を並べることができるようになり、保管効率を3倍に高めることができたという。
QPS(Quick Pick Station)
注文が入ると、これらの倉庫から製品がピックアップスペースに運ばれる。この工程は唯一人手の作業が残る領域だが、ポイントは人が1歩も歩かなくてよいという点である。従来は注文表を持った作業員が各棚を歩き回り、注文製品を集めてくる必要があり、作業員にとっては大きな負荷となっていた。しかし、QPSにより、注文に合わせて倉庫から自動でパレットが送られてくる。
左手側にはピックアップすべき製品が入ったパレットが届き、右側には顧客に届けるダンボール箱が来る。画面の指示に従って、パレットから指定数量をピックアップして右側のダンボール箱に移していく。指定数量を移し終えると自動でパレットは入れ替わる。また注文品が全て収められるとダンボール箱も自動で次の工程に移動する。これにより、従業員の教育コストも80%カットできたという。
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