アパレルで進むマスカスタマイゼーション、島精機製作所が起こす革新:リテールテック2017
島精機製作所は、「リテールテック2017」のインテルブース内に出展し、「シマトロニックデザインシステム」によるマスカスタマイゼーションの実現について紹介した。
ニット製造などの横編機などを展開する島精機製作所は、「リテールテック2017」(2017年3月7〜10日、東京ビッグサイト)のインテルブース内に出展し、「シマトロニックデザインシステム」によるマスカスタマイゼーションの実現について紹介した。
コンピュータ制御による全自動化を推進
島精機製作所は1962年創業の老舗の編機メーカー。自動編機を全世界のアパレルメーカーなどに展開している。同社は1980年台からコンピュータデザインおよびコンピュータ制御に注力し、独自のデザインシステム「シマトロニックデザインシステム」やコンピュータ制御編機などを開発してきた。
リテールテック2017で出展したのは、コンピュータ制御の全自動製造が可能なホールガーメント横編機「MACH2XS」と3Dデザインシステム「SDS-ONE APEX3」の連携による、アパレル製品のオンデマンド生産のデモである。
「MACH2XS」は、製品を1着丸ごと編み機上で生産することが可能なホールガーメント横編機である。従来は身頃や袖などのパーツを別々に編成して、裁断したり縫製したりする後工程が必要だったが、これらの作業なしで一気に完成品に近い形で編み上げることが可能である。省力化とクリックレスポンス生産が可能で、在庫の最適化が可能となる。また縫製では表現できない立体的なアパレル製品などを生産できるという特徴を持つ。
1台でセーターの他、ドレス、ジャケット、ベスト、パンツ、ニットキャップなどさまざまなアイテムの生産が可能で、顧客の要望に合わせてサイズ違いや素材違い、色違いの製品を連続生産できるため、生産のマスカスタマイゼーション化を可能とする。
一方、「SDS-ONE APEX3」は、一台で企画やデザインから、生産や販売までモノづくり全般をサポートするオールインワンデザインシステムである。高精細な製品シミュレーションにより実際のサンプルを編成することなく製品の比較検討が行えるため、サンプリングにかかる時間や素材、コストを大幅に削減可能である。型紙の寸法や糸の種類、デザインの数値を決めると、実際に想定したユーザーの体形に合わせて3次元モデルでのフィット感の確認などが行える。素材選定については、素材感が把握できるようにし、編み上げた際のイメージなども用意している。
新たなビジネスモデルを展開
アパレルメーカーにとっては、サンプルを製造する工程を省くことで、サンプルのコストを低減できる他、モノの物流コストやリードタイムを削減することが可能となる。
さらに、販売インタフェースとして、「SDS-ONE APEX3」を利用することで、エンドユーザーの要望を聞きながら、製品のスタイルやサイズ、フィット感、素材、色、柄、組織などの条件を選択し、高精細なシミュレーションで画面上で製品を確認しながら、オーダーニットを生産することなども可能となる。まさに完全なマスカスタマイゼーションの実現を可能としているわけだ。
島精機製作所 営業統括部 グローバル販売グループの弓山雅之氏は「大手メーカーや有名ブランドではサンプル生産だけで数億円規模になっているところも多い。バーチャルサンプルによりこれらを削減できるだけで数億円規模のコスト削減が可能となる。さらに、販売インタフェースとして利用すれば新たな付加価値型のビジネスモデル構築なども可能だ」と述べている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 「HoloLens」と「Fusion 360」を融合させた未来の設計シーンを公開
オートデスクとマイクロソフトは、2014年から取り組んでいる共同開発プロジェクト「FreeForm」のこれまでの成果として、複合現実(MR)技術を活用した設計環境に関する映像を公開した。 - キヤノンのMR技術が生み出すコミュニケーションの力とは?
キヤノンは現実と仮想を融合するMR(Mixed Reality:複合現実感)技術により、設計・製造現場における新たなコミュニケーション実現を目指す。本格展開から1年が経過した“現在地”について、同社MR事業推進センター所長鳥海基忠氏に聞いた。 - 3D CADで作った3Dデータを生かし切るVRとARの進化
AI(人工知能)と同じく2016年にブームを迎えたVR(仮想現実)。2017年以降、このVRが、製造業や建設業の設計開発プロセスに大きな変化を与えそうだ。AR(拡張現実)についても、「デジタルツイン」をキーワードに3D CADで作成した3Dデータの活用が進む可能性が高い。 - 「VR=仮想現実感」は誤訳!? VRの定義、「製造業VR」の現状と課題
製造業VR開発最前線 前編では、VRやAR、MRの概要、製造業向けVRの他の分野のVRとは異なる特徴、これまでの状況などを説明する。 - ディズニーの夢と魔法を実現する最新テクノロジーの世界
ウォルトの作りし世界を記録するメディア「dpost.jp」を運営する宮田健氏による講演リポート。今回は、「第22回 3D&バーチャル リアリティ展」の特別講演「ウォルト・ディズニー・イマジニアリングの技術と魔法 〜最新アトラクションにおけるVR・AR活用の最先端〜」の様子をお届けする。