なぜ工場ネットワークで「OPC UA」が注目されるのか:いまさら聞けないOPC UA入門(1)(2/2 ページ)
スマート工場化など工場内でのIoT活用が広がる中、注目度を高めているのが「OPC UA」だ。本稿では、OPC UAの解説を中心に工場内ネットワークで何が起きようとしているのかを紹介する。第1回は工場内ネットワークの仕組みと、なぜ「OPC UA」が注目を集めているのかについて説明する。
ビジョン用プロトコルなども多彩
機器の制御を行うフィールドネットワーク上の機器とは少し立ち位置が異なるが、ビジョンコントローラーとマシンビジョンカメラの通信規格は、物理的なインタフェース規格としてGigE Vision、USB3 Vision、CoaXpressなどで接続される。また、ビジョンコントローラーとマシンビジョンカメラはGenICamという共通のソフトウェア制御規格で制御される場合がほとんどである。
コントローラー間ネットワークやフィールドネットワークでは新しいオープン技術である「TSN(Time Sensitive Networking)」の導入も検討されており、一部の規格では採用が決定している。TSNは、イーサネットをベースにしながらも時間の同期性を保証しリアルタイム性を確保できるようにしたネットワーク規格である。「IEEE 802.1AS-Rev Timing and Synchronization for Time-Sensitive Applications」で仕様が定義されている。従来は遅延により、リアルタイム制御などにはイーサネットベースの通信規格は不向きだとされてきたが、その前提を打破する可能性がある規格として注目を集めている。
「OPC-UA」が導入されるとどういう利点があるのか
ここまで見てきたように、工場内に存在するネットワークは、特に「コントローラー間ネットワーク」と「フィールドネットワーク」において、非常に多くの通信プロトコルが乱立している状況であることが分かる。さらにこれらのオープンネットワーク以外にも、ベンダー独自の通信プロトコルが採用され、それで工場内機器を制御しているケースなども多く、情報を一元的に管理するのは難しい状況があった。
OPC UAは、これらの異種環境の差を吸収し、共通のプロトコルで接続できるようにしているという点が最大の特徴である。「OPC」はObject Linking and Embedding for Process Controlの略で、「UA」はUnified Architectureを示す。前身であるOLE for Process ControlはMicrosoft Windows上で動作する、複数アプリケーションをリンクするための仕組みであった※)。
※)関連記事:インダストリー4.0で重要な役目を果たす、Windows生まれの「OPC UA」
これらの特徴が示す通り、OPC UAはプラットフォームへの非依存や拡張性が特徴で、プラットフォーム依存がないためにさまざまな規格の通信情報をシームレスに扱うことができるというのが特徴だ。マイクロコントローラーからクラウドサービスまで利用可能であり、先述したようなコントローラー間ネットワークと情報系ネットワークなどを結ぶ通信技術としては最適な特徴を持っているといえる。
スマートファクトリー化の動きはドイツのモノづくり革新プロジェクトである「インダストリー4.0」が先行したとされているが、OPC UAはそのインダストリー4.0において推奨通信規格とされており、広く受け入れられている。実際に欧州向けの工場で使用する産業機器にはOPC UA対応を求める動きが広がっており2017年には日本の産業機械メーカーも数多くの対応製品を販売し始めている。将来的にはOPC UAに対応していない産業機器が、淘汰されるようなこともあり得る話である。
第2回ではさらに「OPC UAとは何か」をさらに掘り下げていく。
筆者紹介
大釜亮介(おおがま りょうすけ)
株式会社マクニカ 戦略技術本部 先行技術開発統括部 IP開発部 IP2課 課長
日本最大級の技術商社であるマクニカでは、主力の半導体製品、ネットワーク製品販売に加え、IoT/AIソリューション事業やIP(Intellectual Property)販売事業なども展開している。IP事業の主力の1つが産業機械向けIPで、OPC UAに関してもさまざまな知見を持ち、ソフトウェア開発キットである「OPC-UA Server SDK」などを販売している。
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