20社30機種では不十分、家庭用IoT普及のカギを握る「ECHONET Lite AIF認証」:製造業IoT(2/2 ページ)
パナソニック エコソリューションズ社は2018年10月5日、家庭内のさまざまな住宅設備機器をインターネットにつないで連携させる住宅向け「HOME IoT」の中核機器となる「AiSEG2(アイセグ2)」のバージョンアップを行った。機器連携を拡大し、スマートスピーカーとの連携機能の搭載とともに、機器選択の自由度を高めたという。
AiSEG2は2018年度に3万台を販売
パナソニックは今後もさらに「HOME IoT」における連携機能を今後もさらに拡大していく方針で、これらをベースに「AiSEG2」の販売をさらに成長させる。パナソニック エコソリューションズ社 エナジーシステム事業部 システム機器ビジネスユニット ビジネスユニット長の谷口尚史氏は「2017年度は約1万9000台の販売だったが2018年度は3万台の販売を目指す」と述べている。さらに2021年度には6万台以上の販売を目指す考えである。
現在は「ZEHなど新築住宅での組み合わせが大半だが、既築に設置するケースも増えつつあり、その比率は徐々に下がってくると考えている」(谷口氏)としている。
対応機器の数はまだ不十分
さて、今回のパナソニックの対応を見ても分かる通り、家庭用IoTの普及のカギを握ると見られているのがIoT連携機器の拡大である。家庭内にはさまざまなメーカーのさまざまな機器が使用されている。「AiSEG2」で新たに利用できるようになった機能についても機器が対応できていなければ、当然ながら使うことはできない。
パナソニックでは「業界トップクラスの20社33機器への対応」を今回実現したが、このカバー率について谷口氏は「対応できていない機器がまだまだ数多くあるのは認識している。対応メーカーの数もまだまだ十分ではない他、パナソニックの中でも制御まで行える機器は限られている。ジャンルについてはほぼカバーできてきたと考えるが、対応機器の連携拡大はまだまだ始まったばかりで、拡大途上にあると考えている」と、家庭にある機器が全て連携する世界までは遠いということを述べている。
連携拡大を広げていく難しさもある。家庭用の機器連携を実現する規格としては2000年台にエコーネットコンソーシアムによる「ECHONET」がある。「ECHONET」そのものはそれほど受け入れられたとは言い難い状況だったが、その後「ECHONET Lite」が登場し、家電製品でも対応が広がってきている※)。
※)関連記事:「Lite」で普及の兆しを見せる「ECHONET」、波乱万丈の20年史と今後の課題
「ECHONET」はさまざまな技術仕様まで固められた規格となっており、それが新しい技術の登場や時代の流れに合わない形になったことで普及が進まなかった。しかし、「ECHONET Lite」はネットワークなど仕様の自由度を高めたことで、逆に個々のメーカーによる機器認証に負担がかかる状況を生んでいる。基本的には「ECHONET Lite」で規定されている範囲内の情報のやりとりはできることはできるが、メーカーが機能として描く形での制御は行えない場合もある。そこで1件1件の認証作業や仕様のすり合わせなどの作業が必要となっているのだ。
「家のIoT」連携のカギを握る「ECHONET Lite AIF認証」
ただ、今後のこの認証作業を加速させると期待されているのが「ECHONET Lite AIF認証」である。AIFはアプリケーション通信インタフェースを意味しており、「ECHONET Lite AIF認証」は、スマート電力量メーター、太陽光発電、蓄電池、燃料電池、電気自動車充放電器、家庭用エアコン、照明機器、給湯器のエネルギーマネジメントで重要な8分野の製品において、情報連携を保証するために「ECHONET Lite」の上位で通信などの技術規定を明確化した仕組みである※)。経済産業省が進めるネットゼロエネルギーハウス支援事業の1つで定める「ZEH+(ZEHよりも厳しい条件となっている)」の認証要件に入っていることが、対応機器の増加につながると見られている。
※)関連記事:いまさら聞けない「ECHONET Lite」とその認証プロセス
櫻井氏は「ZEH+の要件に入っていることで、ECHONET Lite AIF認証対応機器は今後一気に増えてくると見ている。ECHONET Lite AIF認証対応機器でも個々の認証が必要なことは同じだが、従来に比べるとその負担やかかる時間などは大きく低減できる。より早いペースで認証が行えるようになるため、そちらの面でも認証できる機器は増やしていける」とECHONET Lite AIF認証対応機器を、家庭用IoT普及のポイントだと挙げている。
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