工場内に置くエッジコンピューティング端末にストラタスが参入、高信頼性を強みに:FAニュース
日本ストラタステクノロジーは2018年9月19日、エッジコンピューティング戦略を発表。併せてエッジコンピューティングに最適化した新製品シリーズ「ztC Edge」を発表した。
日本ストラタステクノロジー(以下、日本ストラタス)は2018年9月19日、エッジコンピューティング戦略を発表。併せてエッジコンピューティングに最適化した新シリーズ「ztC Edge」を発表した。
高まるエッジコンピューティングへの期待
米国Stratus Technologies(以下、ストラタス)は、無停止型サーバ(ftサーバ)などミッションクリティカルシステム向けのIT製品やソフトウェアで強みを持つ。しかし、IoT(モノのインターネット)などの世界が広がるとともに、サーバ製品でもエッジコンピューティング用途で使われる機会が増えてきたという。
ストラタス CEOのDave Laurello(デイブ・ロレーロ)氏は「IoTの進展によりエッジコンピューティング領域の重要性は高まっている。IoTが生み出すデータの40%がエッジ領域で処理されるというIDCの調査などもある。ストラタスの製品としても売上高の50%はエッジコンピューティング領域で使用されている。今後はさらにこのエッジ比率が高まる見込みだ」とエッジコンピューティングの重要性について強調する。
ただ、従来のストラタスでは、工場内のオフィス向けサーバシステムなどとしてftサーバなどを導入していたが、製造現場などで使用されるような端末については取り込めていなかった。
ロレーロ氏は「エッジに特有の課題として、ITに関する人材やスキルが不足していたり、サイバーセキュリティへの対策ができなかったり、ミッションクリティカル化への要望があったり、クリアしなければならないいくつかの要件があった。これらの課題を解決できる製品を投入する必要があった」と新たな製品ラインを作った理由について語る。こうして新たに開発されたのが新シリーズ「ztC Edge」シリーズである。
新シリーズの「ztC Edge」
エッジコンピューティングといってもさまざまな領域を含むが、ストラタスが新シリーズ「ztC Edge」で狙うのは、ITとOTのつなぎ目の位置に設置する「エッジサーバ」の領域である。
新シリーズの特徴は、シンプル、万全のセキュリティ、自律性だとする。「ztC」とした名前はゼロタッチコンピューティングを意味しており、ストラタスが得意な高信頼性や無停止機能を確保する一方で、仮想化機能も盛り込んだ。そのため、製造現場で設定やプログラミングなどを行うことなくすぐに利用できる。価格は195万4000円(税別)としている。
この「ztC Edge」シリーズを提案するために、新たなパートナー作りにも積極的に取り組む。既に、OT(制御技術)向けのパートナー対策として、エッジコンピューティングを推進する「Edgecrossコンソーシアム」や三菱電機のエッジ領域のアライアンスグループである「e-F@ctoryアライアンス」などにも参加。関係性構築に取り組んでいる。
「ztC Edge」シリーズは2018年5月に欧米では先行して販売されているが、既に米国では、新ソリューションでロックウェル・オートメーションなどと協業。国内でも同社とは協力した提案を進めていく。その他、シーメンスやシュナイダーエレクトリックなどともパートナーシップを結び、OTエコシステムの拡大に取り組んでいく。
また、将来的なラインアップ拡大も計画する。2019年にはサイバーセキュリティ対策を強化し、フルスタックの監視を行えるコードネーム「Thunderbird」と呼ばれるモデルを投入する計画。その後、毎年1機種ずつラインアップを増やす予定だ。
ロレーロ氏は「エッジコンピューティングはますます重要になっていく。その領域でストラタスは良いポジションを握っている。エッジコンピューティング領域で新たなスタンダードを築いていきたい」と今後の抱負を述べている。
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