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「設計手法に差別化のポイントはない」アズビルのIT活用のコツは“Fit&Fit”モノづくり最前線レポート

東洋経済新報社主催のセミナー「製造業のデジタル変革を支えるPLMの最適解」ではアズビル 執行役員常務 グループIT、ITソリューション本部本部長、azbilグループ業務システム担当の新井弘志氏が登壇。成果を出せるIT活用のコツについて紹介した。

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 製造業は“モノづくり”を本質とした産業である。そのため、設計部門や製造部門などのモノづくり現場を強みとする企業が多い。これらの現場をより効率的に稼働させ、最大のパフォーマンスを生み出すという点が企業としての競争力を生み出すというわけである。一方で、こうした状況から、ITシステムとしては、現場の要望にきめ細かいカスタマイズを要求されることが多く、ITシステム導入の効率化を目指してパッケージシステムを導入しても、アドオンなどの追加開発を必要とするケースが多く存在した。

 こうした状況を整理し、PLMをパッケージのまま、ほとんどアドオン開発なしに導入することに踏み切ったのがアズビルである。2018年9月12日に開催された東洋経済新報社主催のセミナー「製造業のデジタル変革を支えるPLM(Product Life Cycle Management)の最適解」に登壇したアズビル 執行役員常務 グループIT、ITソリューション本部本部長、azbilグループ業務システム担当の新井弘志氏の講演内容を紹介する。

業務の内、どこに差異化の要素があるのか

 アズビルは制御機器や計測機器などを設計、開発するメーカーである。特にビルオートメーションでは国内の大手企業の一角を占める。同社では個別のカスタム製品などが多い市場で、グローバルに展開するために、業務の複雑化が進んでいたことからERP(Enterprise Resources Planning)およびPLMでのパッケージシステムを導入することで、グローバル対応とシンプル化を実現することを目指した。

 パッケージシステムの導入において新井氏は、自社の業務の内、差異化を生み出す業務はどこかを徹底的に分析。結果として、エンジニアリングチェーンにおいては、製造に直結する製造実行支援の領域や企画などの領域は差異化につながる要素があるが、それ以外の領域は特別に大きな差異化につながる要素がなく、パッケージシステムの標準的プロセスに業務を合わせることを選択した。

 新井氏は「企業として差異化ができる領域には投資するべきだが、そうではない領域は独自の開発は必要ない。設計や開発には差異化の要素はあるが、それはプロセスではない。設計や開発のプロセスは標準化しても問題ないと判断した。同じく経理面などを支えるERPなども同様で、特別に企業ごとの大きな違いはなく、アドオン開発はやらないと決めた」と考えについて述べている。

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アズビルの業務における差異化領域と標準領域。標準領域はパッケージシステムを採用する考えだ(クリックで拡大)出典:アズビル

 これらの考えのもと、標準パッケージでアドオン開発を行わなかった結果、PLMシステムは導入決定から1年半で稼働を開始。2017年5月の本番稼働後、1年が経過したが、特に問題なく運用できているという。「導入当初は社内からのクレームも多かったが、3カ月でなくなった。業務プロセスもグローバル対応を進めるということが当初の目的にもなっており、アドオン開発で既存の業務に合わせてしまっては意味がない。当初の抵抗も慣れの範囲の問題であり、ITシステム側の利点も多かった」と新井氏は意義を述べる。

 ITシステム側の利点としては「1つは変化への対応力がある。新たなRoHS指令などにも円滑に対応できた。さらにアドオン開発をすれば、パッケージシステムのバージョンアップがあると、アドオン部分は新たな開発が発生する。これを行わないことで開発リソースの無駄を抑えることができる。さらにベンダー標準サポートが活用できるため、この適用範囲で多くのことが実現可能である」と新井氏は価値を説明する。

そのIT投資は競争力に貢献するものなのか

 新井氏がこれらの割り切った導入を実現できた視点として重要なのが「そのIT投資がどういう競争力に貢献するのか」という点である。

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アズビル 執行役員常務 グループIT、ITソリューション本部本部長、azbilグループ業務システム担当の新井弘志氏

 「導入前にシステムインテグレーターと話をすると、すぐに『アドオン開発しましょう』という。それは本当にわれわれの業務のことを考えてくれているのか疑問に感じた。彼らがビジネスをするために提案しているだけじゃないかと考えた。利点から考えてもパッケージシステムはできる限り標準に近い形で使わなければ意味がない。そのために選定に力を注ぐのだ」と新井氏は強調する。

 さらに新井氏は重ねる。「システムインテグレーターは『Fit&Gap法』でギャップを埋めるために開発するように提案してくるが、われわれの考えではパッケージシステムは購入すれば『Fit&Fit』で、ギャップは作らないというものだった。徹底的に標準に合わせるようにした」(新井氏)。

 最終的に稼働から1年以上が経過しても標準化率は99.9%のまま運用できており「特にアドオン開発する必要はなかったことが証明できた」と新井氏は述べている。

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