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ヒトとチンパンジーの脳の違いを発見、ヒトの脳はより多くの遺伝子発現が変動:医療技術ニュース
京都大学の研究グループは、ヒトの脳で特異的な発現変化を示す複数の遺伝子群(モジュール)を発見し、そのモジュールに分類される遺伝子の数がチンパンジーの7倍以上になることを明らかにした。
京都大学は2018年8月3日、同大学霊長類研究所 准教授の大石高生氏らの研究グループが中国科学院上海生命科学研究院、スコルコボ科学技術大学、新潟大学と共同で、ヒトとチンパンジーの脳の違いを発見したと発表した。ヒトの脳で特異的な発現変化を示す複数の遺伝子群(モジュール)を発見し、そのモジュールに分類される遺伝子の数がチンパンジーの7倍以上になることを明らかにした。
同研究グループは、ヒトの脳だけに現れる特徴を見出すため、ヒトやチンパンジー、ゴリラ、テナガザル、マカクザルを対象とし、機能の異なる複数の脳領域で計測した遺伝子発現データとクロマチン修飾データの分析を実施した。
ヒトとチンパンジーの脳における遺伝子発現を比較したところ、ヒトの脳でより多くの遺伝子発現が変動していた。ヒト特異的な発現変動を示す遺伝子は1851個にも及んだが、チンパンジーの特異的発現変動モジュールは240個のみだった。また、ヒト特異的な発現変動している遺伝子群の半数以上が、海馬のニューロンやアストロサイトにおいて発現が上昇していた。
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