それでも製造業にとって“スマート工場化”が避けては通れない理由:いまさら聞けない第4次産業革命(25)(4/4 ページ)
製造業の産業構造を大きく変えるといわれている「第4次産業革命」。本連載では、第4次産業革命で起きていることや、必要となることについて、話題になったトピックなどに応じて解説していきます。第25回となる今回は「そもそもスマート工場化って必要なの?」という点について考察してみたいと思います。
日本の製造業が取るべきスマート工場の進路
それでは、日本の製造業はどのようにスマート工場化を進めていくべきなのでしょうか。
一般的には、日本の製造業は、人を中心とした現場での改善活動が強みの1つとされているわね。よく、スマート工場化の話を聞くと「無人工場」の印象が先走りして、この日本の現場中心の生産革新活動と相いれないと考える人もいるけれど、そうではないわ。
人を中心としたスマート工場もあり得るということですか。
そうね。私はそう思うわ。まず工場の無人化は分野によっては実現できるけれど、多くの工場で実現できるのは当分先だという点があるわね。そして、スマート工場か現場主義かの「どちらか」ではなくて、「どちらも」生かすのが日本が世界に誇れるスマート工場だと思うの。そして、それが最終的な強みになると思っているのよ。
なるほど。それはうちの社長も喜びそうな話です。
スマート工場化に関して言えば、現状で置かれている立場はそれぞれが大きく異なっているけれど、目指す理想像は同じという状況だと思うわ。それに対して、何から足りない部分を埋めていくのかということを考えるのが重要よ。それぞれに異なるアプローチがあっていいのよ。
ああ、なんだか落ち着きました。グーチョキパーツなりの正解の形を見つけてみせますよ!
日本の製造業の中には、製造現場が優れているために、スマート工場化やデジタル化そのものに「意味がない」とする声があるのも事実です。「そもそもスマート工場化って必要なの?」という問いに正直に答えるとすると「直近を見ると必要ない工場も多い」というのが事実でしょう。
しかし、スマート工場化なしにマスカスタマイゼーションの世界に到達することは可能でしょうか。また、グローバル化が進む中、日本の製造現場のような品質をグローバルの各工場で実現することは可能なのでしょうか。さらに日本の製造現場も人手不足が深刻化する中で、今の品質レベルを維持できるのでしょうか。
「デジタル」の本質的な価値は「何度複製しても品質劣化しない」や「伝達媒体に非依存である」ことなどがあります。これらのデジタルの利点もある意味では改善ツールの1つです。スマート工場化はこうしたデジタルの利点を活用した新たな抜本的改善の仕組みで、長い将来を見ればどこかで対応しなければならないものだと考えます。
さて今回は、「そもそもスマート工場化って必要なの?」についての考えをまとめてみました。次回も最新の動向に合わせてタイムリーな話題を取り上げたいと思います。
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