古い工場で実現したデジタルツイン、シーメンスが示す“デジタル”の本当の意味:スマート工場最前線(1/3 ページ)
シーメンスの中でも「より現実的なデジタル化」に向けた取り組みをしている工場がある。ドイツのバードノイシュタット工場である。同工場のスマート化への取り組みを紹介する。
ドイツのモノづくり革新プロジェクトであるインダストリー4.0などの動きから国内の製造業でもスマートファクトリー化への取り組みが広がりを見せている。
その「インダストリー4.0」の中心企業の1社がシーメンスである。シーメンスのスマートファクトリーといえば、ドイツのアンベルクにあるインダストリー4.0モデル工場が有名だが、同工場は最先端のセンサーや機器を積極導入し5000万ものデータをリアルタイムで取得できるようにしていることが特徴である。
しかし、多くの工場にとって、スマートファクトリー化を進めるために、最新の製造設備を数多く導入することは難しい。そういう意味でシーメンスの中でも「より現実的なデジタル化」に向けた取り組みをしている“古い”工場がある。ドイツのバードノイシュタット工場である。
古い機械を大量に抱える少量多品種の工場
シーメンスのバードノイシュタット工場は80年以上の歴史を持つ工場である。同工場では、サーボモーターを中心とした産業用モーターなどモーションコントロール製品を製造する。従業員は約1600人で、筐体(きょうたい)などの金属加工も行っており、少量多品種製造となっているのが特徴だ。金属加工を行うために数多くの工作機械が使用されているが、機器によっては30年以上使い続けている工作機械なども存在する。
さらに、900個以上の部品で構成されるサーボモーターを年間70万台以上製造するが、サーボモーターは顧客ごとや納入先ごとに機能や性能を変更するカスタマイズが求められる製品である。バードノイシュタット工場で製造するサーボモーターも3万以上のバージョンが存在。これらを効率的に製造するための柔軟性やスピード、品質などが課題となっていた。
そこでシーメンスでは2017年に同工場を金属加工のデジタル化のためのモデル工場の1つと位置付け、同社が提案するソリューションなどをフル活用し、デジタル化およびスマートファクトリーの実証を推進している。さらにこれらの取り組みを紹介するために「Arena of Digitalization」を設置し、同工場での取り組みを紹介している。
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